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Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「和製ハーランドじゃなくて“怪物・中島大嘉”に」デカくて速い20歳FWの魅力は“ドラゴン久保竜彦級”のスケールと茶目っ気
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFC
posted2022/06/12 17:00
タジキスタン戦でのゴールで勝利に貢献し、チームメートと喜ぶ中島大嘉(中央)。大型FWには化ける予感が漂う
「ワンタッチで落としてしまった判断自体が悪い……。自分に対して情けない思いがすごくあって……。プロに入る前の自分だったら、強引にターンして自分でゴール狙ったりというのはあった。今はそれを出せていないのが不甲斐ない。なぜかと自問自答したときに、メンタル的な問題が大きいかなと。
これだけ体もデカくてスピードもあるので、できるのに、なんで自分にストップかけてしまっているのか。ミスして信頼を失ってベンチ外の日々が続いたらどうしようとか潜在的に思っているところもあると思うので……。それに気づいたからよかったとは思うんですが、その程度で小さくまとまってしまってる自分がすごくダサい。どっかできっかけを作って殻を破らないと、このまま無名で、ただ大口叩くだけ叩いて消えていく選手になってしまう」
本人も悔いている判断については、札幌のスタイルとも関係しているようだった。札幌では、1トップに入ったボールは前向きの2シャドーにシンプルに落とし、コンビネーションで崩すのがチームコンセプトのひとつだからだ。それが体に染み付いているため、代表チームでも無意識に落としてしまったのだろう。
「殻を破らないと中島大嘉はここで終わってしまう。次もあるので今できる100%を積み重ねていって、“怪物・中島大嘉”を見せられたら一番いいなと思う。常に冷静に。熱く戦うところは戦って、頭は常に冷静にできたらいい。『していきます!』とは今はまだ言い切れない……」
中島を「怖いもの知らず」と評する大岩監督の起用法
失意のゲームから2日後の6月8日、中島の20歳の誕生日を迎えた。練習後、取材陣に囲まれた中島は元気よく対応した。
「明日の試合は途中からだと思うんですけど、チャンスが来たら誰よりも点を取って。この大会、得点王とかあるんですかね? 何かもらえるんですかね? トロフィーがある? それ欲しいんで、誕生日プレゼントとして持って帰りたい」
いつもの“大嘉節”が戻ってきたように聞こえたが、無理して明るく振る舞っているようでもあった。
こうして迎えたU-23タジキスタン代表との第3戦。ターンオーバーが採用され、これまで出番のなかった松木玖生、馬場晴也、木村誠二、小久保玲央ブライアン、佐藤恵允が先発出場を果たすなか、中島は三たびベンチスタートとなった。
「大嘉ももちろん評価していますよ。怖いもの知らずというところは期待しています」と言う大岩剛監督は、2試合連続となる退場者が出たあと、中島を送り出す。
「伸二さんとか見ていてイメージもあった」技ありループ
そして後半のアディショナルタイム、技ありループで待望の初ゴールが決まったのだった。
試合後、いつもの中島が戻ってきた。マスク越しであっても、大きな笑みを浮かべていることが伝わってくる。
「意外に俺もあのようなプレーはできる。チームに(小野)伸二さんとか、ああいうことができる選手がいるので、見ていてイメージもあった。ちょっとやったろうかなと(笑)」