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野球善哉BACK NUMBER
21年ぶり甲子園決勝も1対18…近江・多賀監督に聞く、「近畿で唯一の優勝ゼロ」滋賀県勢には何が足りない? カギは“有望選手の流出”をいかに防ぐか
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideaki Ujihara
posted2022/06/09 11:10
近畿勢で唯一、全国制覇の経験がない滋賀県勢。この春のセンバツの戦いを振り返りながら、滋賀県勢に何が足りないのか、近江・多賀章仁監督に聞いた
2003年は春・夏、2005年夏と甲子園に出場。2008年には小熊凌祐を擁し、チーム史上初めて2年連続で夏の甲子園に出場している。人の流入は悪くなかった。
しかし結果を残せなかった。
その間に県内のライバルたちが力を付けてきた。近江の座を脅かし始めていた北大津、新興勢力の滋賀学園、進学校の彦根東が肉薄。近江は滋賀の盟主から引き摺り下ろされたのだ。事実、2009年から3年は甲子園から遠ざかっている。
それでも2012年春に3年ぶりに甲子園出場。しかし、全国では代わり映えしない結果に終わった。1回戦を突破はしてもその先にはいけない。2、3回戦までが精一杯だった。
そんな近江を劇的に変えたのが2017年夏だった。100回記念の前年、県大会決勝で彦根東に敗戦。さすがに危機感を覚えたと多賀は言う。
「彦根にある私学として、(公立の彦根)東に負けることは許されないんです。なぜなら、夏の間中、彦根市内は東の奮闘に盛り上がるからです。2017年の時は1カ月くらい、彦根から離れたい。それくらいの気分にさせられました。彦根東のエース・増居(翔太/現・慶応大)くんにやられたんですけど、当時は2年生でしたから、来年もやられるのかと。もう負けるわけにはいかない」
その危機感がチームを変えた。
18年夏、金足農に敗れるも林&有馬バッテリーを見て…
2018年夏は県大会を制し甲子園に出場。1回戦で智弁和歌山を撃破すると勢いに乗った。2回戦で前橋育英、3回戦では常葉菊川と甲子園優勝校を次々に倒した。大阪桐蔭の春夏連覇がかかった年だったが、「大阪桐蔭を倒せるのは近江しかない」。それほどの期待感のあるチームだった。
準々決勝では金足農業の神がかり的な戦いぶりを前にサヨナラ負けを喫したのだが、夏の甲子園17年ぶりのベスト8進出がもたらしたものは大きかった。
この戦いを見て、近江への進学を考えたのが、現在の主力選手たちだ。
2018年のチームには2年生バッテリー・林優樹(現・西濃運輸)―有馬諒(現・関西大)の二人がいた。今年のチームは控え投手にサウスポーが多くいるのだが、ほとんどが林に憧れてのことだ。
大阪桐蔭出身の兄、東邦出身の父親を持つ山田も、この大会の戦いが与えた影響は大きいという。