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欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
クリロナとメッシ後の主役は「34歳の万能ストライカー」ベンゼマのバロンドール獲得を信じて疑わないワケ〈識者が選ぶリーガベスト11〉
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byDaisuke Nakashima
posted2022/06/02 17:00
覇権奪回を実現したR・マドリーにおいて、34歳のベンゼマの存在感は絶大だった
ペドリは期間限定で世界最高のプレーヤーだった
勤続疲労から負傷離脱を繰り返したペドリの選出に迷いがなかったのは、ピッチに立った年明けからの約3カ月間のパフォーマンスが、桁違いだったから。2度のキックフェイントから鮮烈なミドルを突き刺した30節のセビージャ戦も含め、あの期間に限定すれば、おそらく彼が世界最高のプレーヤーだった。メッシの退団で失ったベストイレブンの指定席は、この19歳の大器が奪い返すことになるだろう。
3トップの右には、コパ・デル・レイを制し、最後までCL出場権争いにも絡んだベティスからナビル・フェキルを選んだ。リーグ戦の出場時間はチーム最長。気まぐれな左利きのマジシャンが、6得点・8アシストとコンスタントに結果を残した。シュートにつながったキーパスは平均2.5でリーグ2位、被ファウル数は2.7で同1位。敵味方に与える影響力の大きさを、数字が物語っている。
バルサの逆襲になくてはならなかったウスマン・デンベレは次点止まり。予測不能なプレーで対峙するDFを手玉に取り、リーグ最多の13アシストを記録したが、ケガに契約問題も重なり、ようやくこの問題児が“その気”になったのはシャビ体制となって、仲良しのピエール・エメリク・オーバメヤンが冬に加入してから。才能はピカイチだけに、バルセロニスタからすれば、「もっと早く本気を出してくれれば……」との想いが強かったはずだ。
ベンゼマほど芸の幅が広いストライカーは見当たらない
左はビニシウス・ジュニオール(マドリー)で決まりだ。監督の信頼が選手の成長を促す特効薬であることを、如実に示したケースと言っていい。アンチェロッティの寄せる信頼が大きな自信を生み、ゴール前で慌てることが一切なくなった。CL準決勝のマンチェスター・シティ戦がそうだったように、対策を練られ、一度は止められても、同じ相手に2度はやられない。マドリーのカウンター戦術に、精神的な安定を得た若きスピードスターは絶対に欠かせなかった。
ベティスのフアンミも左サイドに固定され、フィニッシャーとしての才能を開花させたが、その覚醒の度合いでビニシウスには及ばないだろう。
そしてCFは、文句なしで得点王のカリム・ベンゼマだ。相棒ビニシウスの成長も追い風に、ラ・リーガでは27得点・12アシスト、CLでも15得点・2アシスト。これほど芸の幅が広く、これほど勝負強いストライカーは、欧州全土を見渡してもなかなかいない。
30代も半ばを過ぎて、さらに進化のギアを上げるベンゼマが、いまやクリスティアーノ・ロナウドが、そしてメッシが去ったラ・リーガの、誰もが認める顔だ。今年のバロンドールは彼のものだと確信している。
<#2につづく>