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ジダンのCL決勝ボレーが「銀河系軍団・終わりの始まり」となった真相「当初は何の問題もなかった。だが歯車が…」〈当時のレアル広報部長が告白〉
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/05/28 06:01
CLを制した翌シーズン(02-03)のレアル・マドリー。豪華な面々は同じでも、内情は少しずつ変わっていたようだ
「まずはロナウドとジダンを筆頭とするグループがある。ここにはロベルト・カルロス、イバン・エルゲラ、マケレレ、グティがいた。そしてもう一つが、フィーゴとラウールのグループで、イエロやサルガドがいた。当初は何の問題もなかった。ジダンがボレーを決めたあのシーズンも、雰囲気はよかった。何事も、上手くいっている時はいいものだ。しかしその後、負けが続き、噛み合っていた歯車が狂いだした。それに全員で立ちむかおうとするような結束は、あのチームにはなかった」
食事の場でイエロが切れてしまってね
彼は『アサドール・ドノスティアッラ』の姉妹店で起きた“チストゥの反乱”のことを教えてくれた。
「デルボスケを解任しようとしていたペレスに、食事の場でイエロが切れてしまってね。ペレスの胸に指をつきつけて暴言を吐いた。ぞっとしたよ。その後まもなく、彼とデルボスケはクラブを去った。もはや収拾がつかなくなっていた」
激動の数年間を、ロッカールームの中から見た彼も、やがで方針の違いでクラブを離れる。彼はメディアの世界に入った。想像できたことだけれど、メディア界で引っ張りだこになった。銀河系時代のロッカールームの中の話をできる人は、限られている。
今も彼はあらゆるメディアで、15年前のシーズンのことを、生き生きと語り続けている。
夕暮れのベルナベウを訪れると、記者席にロベルト・カルロスが座っていた。今は、『レアル・マドリーTV』で仕事をしているという。近くの客席のファンが気づき、「ロベルト!」と叫び写真をせがむ。やれやれといった風に、彼は笑みを浮かべ近づいていって、青年と写真に収まる。歴史を築いたサイドバックの人気は、今も変わらない。
ベルナベウのスクリーンに、オペラ音楽とともにいつかのボレーが流され、やがで選手が入場してくる。ロベルト・カルロスの視線の先、マドリーのベンチ前には、かつて彼がクロスを送った背番号5が立っている。観客は「ジズー」と声援を送る。
人々の心の中で、15年前のボレーシュートは、いまも綺麗に回転を続けている。<#1から続く>
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