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欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
鎌田大地の号泣と“日の丸スパイク”に思い出す4年前の「カタールW杯には絶対出たいですよ」 長谷部誠とのEL優勝写真に“秘められた熱量”とは
posted2022/05/28 11:02
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph by
Daisuke Nakashima
舞台はサンチェス・ピスファン。セビージャFCのホームスタジアム、スペイン南部アンダルシア州セビージャにある。
5月18日、この日の最高気温は35度を超えていたが、時刻は23時50分を回り、暑さは幾分和らいだものの、まだ肌にじっとりとしたものがまとわりついた。
試合はキックオフから3時間になろうとしていた。
UEFAヨーロッパリーグ決勝、フランクフルト対レンジャーズの死闘が繰り広げられるカクテル光線が降り注ぐ緑のピッチ、そのハーフライン上に2名のGKとフランクフルトのPKキッカーを除いた19名が並んでいる。
勝負は延長戦を終え、1-1のままPK決着に突入。後攻のフランクフルト19番ボレが5人目のキッカーとしてボールをセットした時、スコアは4-4、このシュートを決めればフランクフルトは念願のタイトルを手にできる。
鎌田、長谷部はPK戦勝利の瞬間……
鎌田大地は、タイトルを手に入れることを強く願っていた。20歳と若くしてサガン鳥栖よりフランクフルトへ移籍、また日本代表でも活躍の機会を少しずつ増やすなど順風満帆にも見えるが、満足はできていない。このタイトルを手にすることで初めて自分のサッカー人生が報われると思っていた。
一旦ピッチに片膝をついて祈るように背番号19のゴールを見届けようとしたが、すぐに立ち上がった。
このままでは走り出すことができない。
このシュートが決まれば、どこに向かうかは分からないが、我を忘れて皆と走るんだと思い出していた。
途中出場ながらキャプテンマークを巻いた38歳の長谷部誠もまた、強くボレのゴールを願っていた。
キャプテンとして優勝を願う気持ちもあったし、できればキッカーとしての自分の番が回ってこなければ良いなとも思っていた。
6番目のキッカーを任されていたことを試合後に明かしている。
最後のシュートの瞬間、カメラはキッカーに向けていなかった。
ピッチ中央で祈る9名のフランクフルトメンバー、その中でも鎌田にピントを合わせて構えていた。主審のホイッスルから少しの間を置き、白ユニホームを纏った9人が走り出す。
試合終了、そしてフランクフルトが優勝したことが伝わってきた瞬間だった。
少しだけ残念だったのは、それぞれ思い思いの方向へ走り出し、メンバーが散り散りの写真になってしまった点だ。
それだけ素の感情に近い喜び方だったとも言える。