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「あのボレーはジダン自身を救ったんだ」「とにかくシャイで…」銀河系マドリー指揮官と同僚が語る“CL史上最高ゴールと天才MFの素顔”
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byDaisuke Nakashima
posted2022/05/28 06:00
『アサドール』店内。無数の写真の中に「伝説のボレー」の一枚が
あの決勝の後の祝勝会のことを父から聞きました
「うちで開いた、あの決勝の後の祝勝会のことを父から聞きました。最高の雰囲気で、喜びに満ちていたと。あのボレーは、今もうちの常連の間で語り草になっています」
2000年代初頭に築かれた銀河系、ジダンのボレーシュートはその頂であり、やがて続く凋落の始まりでもあった。
グラスゴーの夜に描かれたその美しい軌道は、当時のレアル・マドリーに関わった多くの人生を変えることにもなった。
時間通りにやってきたビセンテ・デルボスケはソファに腰掛けると、顔なじみの店員にエスプレッノを頼んだ。
待ち合わせたのは、マドリードの喧騒から少し離れたところにある、彼のお気に入りのホテルのカフェだ。落ち着いた雰囲気のいつもの場所。ここはかつて、レアル・マドリーが合宿で使っていたところでもある。
半年前に現場を離れてからも、彼はスーツを着て、昔のようにこのホテルを訪れる。
デルボスケは監督をする気はなかった?
「監督をやっていた頃とは、随分と生活は変わった。私も66歳になった。もう監督をすることはないだろう」
嘘か本当か、デルボスケは笑った。
スペイン代表監督の仕事が終わり、現在は育成や講演をして回っている。つい先日は、広島に行き、指導者の前で講演をした。
経歴はタイトルに彩られている。チャンピオンズリーグにリーガ、スペイン代表ではワールドカップとユーロを制した。クラブと代表の双方で、これほど輝かしいタイトルを手にした監督は、世界中を探してもほとんどいないだろう。
「幸運だったと思う。素晴らしい選手がいたから、これほどのタイトルに恵まれた。私は、そもそも監督をしようとは考えていなかったのにね」