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オークス直前に顔面を蹴られて放馬…発走“15分の大遅延”はなぜ起きたのか?「多くの馬の戦いは、スタート前に終わってしまった」
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKeiji Ishikawa
posted2022/05/23 12:00
5月22日のオークスで牝馬クラシック2冠を達成したスターズオンアース。鞍上はクリストフ・ルメール
“メンタル耐久レース”で複数馬がスタート前に脱落
蹴られて放馬し、競走除外となったサウンドビバーチェは気の毒だったが、待たされた馬たちにとっても、あの時間は大きなストレスになった。ゲートが開く前から、メンタル面での耐久レースが始まっていたと言える。
どの馬も、ゲート裏で輪乗りが始まるとスタートが近いということを理解している。なのに、なかなかゲートに誘導されず、輪乗りをつづけさせられた。こうなると、神経質すぎたり、我慢強さが足りなかったりする馬はイライラして脱落してしまう。
1番人気のサークルオブライフは、ゲートが開くとアオるように出て、両側から挟まれて後ろの位置取りになった。そのまま本来の末脚を繰り出すことができず、12着に終わった。騎乗したミルコ・デムーロはこう話した。
「ゲートのなかでイライラしていました。最初から脚が出て行かなくて、反応がよくありませんでした」
そうなってしまったのは、ゲートに入る前にメンタル面で消耗していたからだろう。
1枠1番から出た武豊のウォーターナビレラも、デビューから初めての2桁着順となる13着に惨敗した。「ゲートで待たされて突進したのがすべて」と武が話したように、この馬の戦いも、スタート前に終わってしまった感がある。
奇数枠はゲートに先入れとなる。今回は、放馬による待機のあと、二重に待たされることになった。オークスで1番枠から76年も勝ち馬が出ていないのは、ゲート内で待たされることも関係しているのかもしれない(ほかの奇数枠も同じ条件ではあるが)。
スターズオンアースはゲート内でのストレスが少なかった
勝ったスターズオンアースが引いたのは、大外18番枠だった。昨年までの10年で3着以内が1頭もいない鬼門の枠だったのだが、強靱な精神力でジンクスを打ち壊した。
最後入れではなかったが、それでも後入れの偶数枠なので、最後から4頭目くらいに枠入りした。放馬のアクシデントで待たされたあとだけに、狭いゲートのなかではなく、外で待機できたことは大きい。
スターズオンアースは、桜花賞の直線で、何度も他馬と接触しながら怯むことなく突き抜けたように、非常にメンタル面が強い。元々ハートの強い馬が、ゲート内でストレスを受ける時間が短く済んだのだ。
ゲートが開く前の段階で、かなり有利な立ち位置にいることができた。