沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
オークス直前に顔面を蹴られて放馬…発走“15分の大遅延”はなぜ起きたのか?「多くの馬の戦いは、スタート前に終わってしまった」
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKeiji Ishikawa
posted2022/05/23 12:00
5月22日のオークスで牝馬クラシック2冠を達成したスターズオンアース。鞍上はクリストフ・ルメール
道中は縦長になった馬群の中団につけ、直線で外に持ち出された。ラスト400m付近では先頭から6馬身ほど離されていたが、ルメールの右鞭を受けてストライドを伸ばす。ラスト200m付近で、また手前を左にスイッチするとさらに加速し、2着のスタニングローズを1馬身1/4突き放してゴールした。
勝ちタイムは2分23秒9。上がり3ハロンはメンバー最速の33秒7だった。
ルメール「お待たせしました」
テン乗りでオークスを制したルメールは、馬上で拳を握りしめた。現役最多タイのオークス3勝目となったわけだが、意外にも、これが今年のJRA重賞初勝利でもあった。
「このステージに(立つのは)久しぶりです。お待たせしました」
勝利騎手インタビューでそう言い、笑顔を見せた。
「馬の状態はすごくよかったです。18番枠から結構大変なレースになりました。最初は優しく乗りたかった。最初から冷静に走って、最後はすごくいい脚を使ってくれました。彼女の血統はスタミナがあるので、距離は心配していませんでした。1600mでも2400mでも勝ったので、2000m(の秋華賞)も勝つことができると思います」
ルメールは、2代母スタセリタ、叔母のソウルスターリングにつづき、この母系だけで日仏のオークスを3勝したことになる。
「相当精神力が強い」今後が楽しみになった一頭
2着は10番人気のスタニングローズ。2番枠から好位で流れに乗り、力を出した。
3着は8番枠から出た横山武史のナミュール。「折り合いが課題なので返し馬から工夫した」と横山。発走時刻までゲートに戻ってくることができるのかと、見ていて心配になるほど遠い2コーナーまで返し馬をし、兄の横山和生が乗るライラックと一緒にスタンド前の外埒沿いをゆっくり戻ってきた。馬に観客をじっくり見せて、拍手や歓声が聞こえても心配ないことを教え、この状況で走ることを納得させたのだろう。
掲示板に載った5頭のうち、奇数枠は4着のピンハイ(15番)だけだった。キャリア4戦目でありながら、先入れでこれだけ頑張ったのだから、相当精神力が強い。今後も楽しみな一頭だ。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。