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ノーザンファームの男たちが語る"歴代最強のダービー馬”「2冠馬ドゥラメンテは集大成」「ディープの仔は馬房を出た瞬間にわかる」 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2022/05/29 06:00

ノーザンファームの男たちが語る”歴代最強のダービー馬”「2冠馬ドゥラメンテは集大成」「ディープの仔は馬房を出た瞬間にわかる」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

第82回日本ダービーを制したドゥラメンテ(2015年)

――4年後の平成21年にロジユニヴァースがダービーを勝ちました。

中島 この馬は、生まれたとき両前脚が90度ぐらい外を向いていたんです。手術ではなく、装蹄と削蹄で矯正しました。上体はやわらかそうでよかったものの、この脚元では売り物にならない、でも競走馬にはしようと調教を始めました。すると、乗ったスタッフがすごくいいと言うんです。

 そして2歳の春、馬主になったばかりの久米田正明オーナーが来て、調教の動きがいいので売ってほしい、と。脚元についても説明したのですが、どうしてもほしい、契約書を交わさないと帰らないとまで言われて、熱意に負けてお譲りしたんです。そうしたら新馬から弥生賞まで4連勝、皐月賞こそ負けましたが、大雨のなかダービーを勝った。馬主になって初めて持った馬でダービーを勝つなんて、驚きました。

吉田 ロジユニヴァースの祖母ソニンクは、エージェントを通じて買った馬で、曾祖母のソニックレディはGIを3勝した名牝なんです。ロジユニヴァースのいとこのディアドラが昨年秋華賞を勝ったりと、この牝系には勢いがありますね。

菅谷 ロジユニヴァースが勝った年の10月20日に、1歳だったオルフェーヴル(白老ファーム生産)がNF空港牧場に移ってきました。5月14日の遅生まれというのもあって、馴致開始も遅かったんです。とにかく小さくて、416kgしかなかった。朝日杯FSや宝塚記念などを勝っていたドリームジャーニー(白老ファーム生産)の弟だし、順調に来ていたので期待はしていましたが、さすがにあれだけ走る馬になるとは想像できませんでした。

 空港牧場を出て行ったのが翌年の5月17日なので、7カ月しかいなかった。普通はもう少し長くいるのですが、この期間でトレセンでの調教に堪え得る体力がつき、いいところがあったので早めの移動になりました。

吉田 ダービーと菊花賞でオルフェの2着だったウインバリアシオンも空港牧場にいて、調教の動きはむしろこっちのほうがよかったですよね。皐月賞でオルフェの2着だったサダムパテック(白老ファーム生産、マイルCS優勝)もいい馬でした。

菅谷 オルフェは競走馬になってから、逸走したり、騎手を振り落としたりしていましたが、育成時代はそんなに手こずった印象はなかったんです。だんだんそうしたところが競馬で出てきた。そのくらい、馬にとって競馬というのは苦しいんですね。

ディープ産駒の成長力を感じさせました

――翌年のディープブリランテ(パカパカファーム生産)も空港牧場の育成馬ですね。

中島 代表が見て、セレクトセールで3255万円で落札しました。まだディープ産駒の値段がそれほど高くなっておらず、この値段で買えました。

菅谷 これもオルフェ同様5月8日と遅生まれで、空港牧場に来たのは平成22年の10月8日でした。そのとき457kg。馬体が詰まって、コロンとしていたのですが、歩きがやわらかく、さすがディープ産駒だと思いました。性格のいい優等生タイプで、扱いやすく、乗っても気難しさを出しませんでした。来てからひと月かひと月半ほどで坂路調教を始めるという順調さは、ダービーを勝った他の馬にも共通していますね。この馬は2歳の6月20日に出て行くときには500kgぐらいになっていました。すごくやわらかいフォームで走るので、距離はもつだろうと思っていました。

吉田 ブリランテは、ディープ産駒の成長力を感じさせました。同世代でGIを7勝したジェンティルドンナもそうでした。そうやって成長する馬じゃないと勝てないと思います。ただ、いつ、どれだけ成長するかはわからないので、今は華奢でも、この時期に必要なことをやっていればどこかで変わると思ってやるしかない。ブリランテもジェンティルドンナも、ある時期、成長とのバランスを見て調教をゆっくりにしたら、そこですごく体がよくなりました。

【次ページ】 「2冠馬ドゥラメンテは集大成」

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