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ノーザンファームの男たちが語る"歴代最強のダービー馬”「2冠馬ドゥラメンテは集大成」「ディープの仔は馬房を出た瞬間にわかる」
posted2022/05/29 06:00
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Takuya Sugiyama
――ノーザンファーム(以下NF)の生産馬は昨年までにダービーを9勝、育成馬を加えると12勝もしています。NF生産馬初のダービー馬となったフサイチコンコルドはどんな仔馬だったのでしょう。
吉田俊介NF副代表 お母さんのバレークイーンを、父(吉田勝已NF代表)が英国タタソールズのセリで購入し、そのときお腹に入っていたのがフサイチコンコルドだったんです。父にとっては、繁殖牝馬を購入するために参加した初めてのセリでした。
中島文彦NF場長 代表がセリ名簿を見て気に入って、思っていたより安く10万ポンド(当時のレートで約2000万円)で落札できたんです。元々の予算は25万ポンドだったので、もう1頭、17万ポンドでローザネイを購入しました。
菅谷清史NF空港場長 ローザネイは、オールカマーなどを勝ったロサードや、朝日杯FSやジャパンCなどを勝ったローズキングダムといった馬たちにつながる「薔薇一族」の始祖になります。
――予算を2万ポンド超えましたが。
吉田 それはオッケーなんです(笑)。ぼくが海外に馬を買いに行くときも、いつも行け行けですから。
中島 バレークイーンは初仔のフサイチコンコルドに母乳をやらなかったり、首に噛みついたりと育児拒否をしたんです。それでも、何日か人間が世話をすると落ちついて、育児をするようになりました。フサイチコンコルドは、人間が助けてくれたことをわかっていたので、人を信頼する性格になったのかもしれません。
アドマイヤベガは「本当に優等生でした」
――その後、NF空港牧場で育成したスペシャルウィーク(日高大洋牧場生産)が平成10年のダービーを勝ち、翌年は生産馬のアドマイヤベガが優勝。母は桜花賞とオークスを勝った名牝ベガです。
中島 ベガはメリハリの利いた馬で、何かあるとキレるようなこともありましたが、普段は優しい性格でした。根性が据わっていて、亡くなる直前まで子どもを可愛がるような、子煩悩でいいお母さんでした。
吉田 ぼくがNFに入社した平成10年、2歳だったアドマイヤベガに乗ったことがあるんです。乗馬ばかりで、あまり競走馬に乗ったことはなかったのですが、やわらかくて、すごい動きをするな、と。いい競走馬ってこうなんだ、と感じる原体験として大きかったですね。
中島 本当に優等生というか、評判がよかったですね。乗っていた人はみな「ダービーはこれが勝つよ」と言っていました。