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プロ野球PRESSBACK NUMBER
“あの球審騒動”を収めた松川虎生の中学時代「監督、家に遊びにいってもいいですか」…“あるヤクルト選手”が見抜いた素質「もうプロのレベル」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/05/19 11:06
プロ野球史上3人目となる「高卒新人捕手の開幕スタメン」を果たし、佐々木朗希が先発した7試合は全てマスクを被るロッテ松川虎生。彼の原点に迫った
男子も新1年生には、本拠地の貝塚市や近隣の泉佐野市にとどまらず、大阪市内から小一時間かけて電車で通ってくる選手がいる。「(当時の)小園より球が速い子も入ってきた。この子らは松川、小園に憧れてるんやろうね」と川端監督。基本的に1年生から3年生まで全員同じ練習に参加できることがチームの特徴。自主性を重視するなかでも、夢に向かう凛とした姿勢は脈々と受け継がれている。
師匠のエール「やっぱり正捕手は松川だな、と言われるように」
中学生にして大物の風格を漂わせていた松川だが、最後まで勝てない相手もいた。高校入学直前の3月。3年生が1、2年生相手に行う「卒団試合」を終えた後に、川端監督が自らマウンドに立ち、卒業生一人ひとりと対戦した。18人で、安打したのはたった2人。松川は空振り三振だった。
「悔しそうだったので、最後の思い出にもう一回チャンスをやるぞ、って。松川とはもう一度対戦して、また三振でした。弱点を知っているというのもあるし、コントロールには自信があるからね(笑)」
今年69歳になる川端監督だが、かつて勤めていた大阪市消防局の軟式野球部では、エースとして何度も全国大会に出場。50歳を超えてもプレーを続け、今も毎年オフには慎吾の自主トレに付き合い、打撃投手として1日500球以上投げ込むスゴ腕なのだ。逞しくプロの道を歩き始めた松川に、師匠は愛情たっぷりのエールを送る。
「プロはそんなに甘い世界じゃないからね。4、5年後にチームの大黒柱になって、どんなピッチャーが投げてもやっぱり正捕手は松川だな、と言われるように頑張ってほしいです。バッティングに関してはもっと強引に行ってもいいんちゃう、とは感じていますよ。体にしみ込んでいるからつい状況に応じたバッティングをしちゃうんだけどね。お前にライト前ヒットを期待している人はあんまりいないよ、と言いたくなってしまう(笑)」
強く優しく頼もしき18歳の原風景。刻み続けた「誰からも愛されるプロ野球選手になる」という夢の先には、まだまだ周囲を驚かせ続ける活躍が待っているはずだ。
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