「勝ったときの感情表現が喜ぶことだけだとは思わないし、違う形があってもいいと思う。エンターテインメント的なものに関しては……。それは仕方がないでしょ。だって、日本人は、僕はそういう環境で育ってきてないですからね。出来る人もいるだろうけど、僕は僕なりに思い切り喜んでますからね」

　彼の所属するホンダ・チーム・アジアのスタッフは、青山博一監督を除いてすべてヨーロッパ人である。小椋藍は、初優勝を達成したヘレスでスタッフの中に飛び込んで胴上げをされていた。そして、ひとりひとりと抱き合い、これまでにない喜びの渦の中にいた。「もっと喜べと言われてもね。僕はすごく喜んでましたよ。ただ、みんなと一緒に喜びたい。ひとりでわいわい喜んでいるとなんだか覚めちゃうので……」と笑った。

表彰台での小椋。十分喜んでいるように見えるが……

Moto2王座とMotoGP昇格の現実味

　小椋の目標は、グランプリでチャンピオンになることである。デビューしたときから「Moto3でもMoto2でもMotoGPでも、どんなカテゴリーでもチャンピオンになりたい」と語ってきた。Moto3では最終戦決着までもつれ込んだがタイトルは獲得できず。Moto2クラス2年目は、6戦を終えて総合2位につけている。初優勝を達成した小椋の2勝目は、間違いなく、すぐそこにあると思うし、彼が得意とするサーキットはこれから続く。彼のMoto2チャンピオン獲得とMotoGPライダー昇格が一気に現実味を増すことは間違いない。

「今回の優勝は確かにいいレースだったし完璧だった。でも、すべてが完璧だと思える瞬間は、たぶん、チャンピオンを獲ったときかもしれないですね」

　そのときに彼はどんな喜びを表現してくれるのだろうか。それは、そのときの楽しみにとっておきたいと思うのである。

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