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「これでレースに集中できる」念願のMoto2初勝利を果たした小椋藍が、一気に王座争いの主役へ《来季MotoGP昇格も》
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2022/05/07 11:01
グランプリ通算60戦目、Moto2に限れば23戦目で念願の初優勝を遂げた小椋。ここから一気に表彰台の常連となれるか
「ポルトガルGPが行われるポルティマオは、苦手ではないけれど、これまでどういうわけか転倒が多かった。それは自分のミスだから仕方ないけど、今回は、ホント、勝たしてくれないなあと思いましたね。ポルティマオは、コロナ禍になってからカレンダーに組み込まれたサーキットですけどね、ヨーロッパのライダーたちは、ここでたくさん走っているし経験値が高い。僕はMoto3の2年目に初めて走って、今年が3年目。ポルティマオは速いライダーがたくさんいて、そういう意味では、すごくアウエー感がある。それにくらべたらヘレスは全然そういうのがないですね」
悔しいレースに終わったポルトガルGPを終えたときに小椋はこう語っていたが、アウエー感の強いポルティマオで優勝の手応えがあった。となれば、Moto3時代にも表彰台に立っているヘレスでは、さらに優勝が現実味を増すのではないか。そして、その通りのレースとなった。
喜びではない勝利の感情表現とは
そのヘレスで念願の初優勝を達成し、優勝会見ではいろんなことを聞かれたという。その中で、イチバン答えにくい質問は? という問いかけにはこう答えてくれた。
「予想はしていたけれど、『これで来年はMotoGPか』って聞かれたときは、Moto2でやっと勝ったばかりなので、と答えた。ほんと、Moto2でたった1回勝っただけですからね。それなのに、いろんなカテゴリーでチャンピオンになったライダーたちが集まるクラスに行くのかって聞かれても答えようがない。もうひとつは、あなたはいつも喜んでないけど、今回はうれしい? と聞かれたときに驚いた。自分では精いっぱい喜んでいるのになあと思いましたね。前回アメリカで2位になったときも、今回PPを獲ったときも、優勝したときも本当にうれしかったし……」
外国人選手、特にヨーロッパのライダーたちは、一戦ごとの感情の表現が上手である。とにかく、思い切り喜ぶ。そして観客を喜ばせる。外国人記者たちは、小椋にもエンターテインメント的なものを求めているのではないかと聞くと、常にちょっと控え目な小椋はしばし考え、こう答えた。