甲子園の風BACK NUMBER
麟太郎に負けず劣らずのパワー!“100kgスラッガー”内藤鵬(3年)の可能性…中国籍の両親から授かった名前「すごく強い伝説の鳥らしくて」
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2022/05/04 06:02
佐々木麟太郎ら注目スラッガーに負けないポテンシャルを感じさせる日本航空石川・内藤鵬(3年)
「今年初の対外試合で、内野ゴロで思い切り一塁を駆け抜けたら左足の太ももが肉離れになってしまって……。キャプテンとして全力疾走しないといけないというのもありましたし、思い切り走っていたら、途中であれ?という感じで足が攣ったような感覚でした」
決して重症ではなかったが、別メニューの練習の時期は1カ月近く続いた。春の県大会には何とか間に合ったが、今度は4月下旬の守備練習中にボールに勢いよく飛び込んでしまい、右肩を負傷。こちらも大事には至らなかったが、「自分の準備不足も原因。アップから見直さないといけないです」と反省しきりだった。
星稜・マーガードから2三振
昨秋は石川県大会の準々決勝で星稜と対戦した。だが、センバツでも活躍したマーガード真偉輝キアン投手のキレのあるストレートに全く対応できず、2打数2三振。チームも2-7で敗れた。
「星稜さんが自分の特徴を見て徹底的に対策していて、インハイをかなり攻められました。自分もしっかり攻めていけば良かったのですが、自分の攻めが鈍くて仕留めきれませんでした。自信を持って試合に入ったつもりでしたが、打席に立つと冷静さを失ってしまって、打たなきゃという気持ちが空回りしていました。普段は手を出さないような球に手を出していましたし、自分のバッティングができませんでした。マーガード投手はゾーンにどんどん投げ込んでくるイメージがあったのですが、実際はコースにもしっかり投げ分けていました」
反省の弁しか口から出てこない。それほど屈辱的な敗戦だった。だが、秋の公式戦が終わって以降、内藤はまず“チーム改革”に乗り出した。
「自分を優先するのではなくチームを優先して、それで初めて自分のことを意識できると思っています。自分が2年生の時のチームは、“あぁ、今日もランメニューや”ってどちらかと言うと暗い気持ちのままキツイ練習に入っていったんですけれど、自分たちの代になってからは、ランメニュー前に一度集合して“みんなで今日も頑張っていこうや!”みたいに全員で気合いを入れて始めるんです。実際に1人が走り切る寸前くらいで“頑張ろうや!”ってみんなで声を掛け合っていたんです。
秋までは“自分さえ打てばいい”みたいな考えの選手が多かったので、冬場はきつい練習を1人で乗り越えるのではなく、みんなで乗り越えるようにしました」
自分だけが満足するのではなく、みんなで満足する。互いに仲間を優先することが自分の結果にも繋がる。内藤は周囲にそう言い聞かせて、厳しい練習に前向きに取り組んできた。
日本航空石川は石川県の能登半島中部にあり、冬場のグラウンドが深雪で覆われる。今年の冬も多い時で雪が50cm近く積もった。連日の室内練習場での練習は根気と持久力との戦いだが、全員で乗り越えたからこそ、チームの結束力が固くなったと自負している。