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17歳メキシコ人左腕の衝撃…ソフトバンクが前例なき“青田買い”に踏み切れたワケ「週に2回、日本語授業を受けて…」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKotaro Tajiri
posted2022/05/03 11:04
モイネロを彷彿とさせるメキシコ人17歳左腕・アレクサンダー・アルメンタ。ホークスが獲得した育成外国人選手4人の素顔とは
ただ、全体的に見ればスチュワートは例外的で、これまではキューバから若手有望選手を連れてくるケースが多かった。今や球界トップレベルのリバン・モイネロも2017年5月に来日した当初は「背番号143」の育成選手だった。それと同時期に入団した当時二刀流で「キューバの大谷」と評されたオスカー・コラスはこの時19歳だった。2021年1月にはキューバ人右腕のアンディ・ロドリゲス(当時22歳)も獲得した。
しかし、コラスとロドリゲスはホークスとの契約期間中にもかかわらず突如亡命ないしは音信不通となり、球団を大いに混乱させた。三笠GMはその点について明言しなかったものの、ホークスは新経路へ舵を切ったと考えてよさそうだ。
獲得選手の低年齢化…米メジャーでは?
ただ、それ以上に今回注目すべきなのは、18歳未満のいわゆる未成年選手を獲得したという点だ。
「メジャーを見ても獲得選手が低年齢化しています。それに対抗して中南米からの選手獲得となると、この年齢になった」と三笠GMは彼らを獲得した際の会見で説明した。
世界の野球界ではこのような「青田買い」が一般的になっているようだが、一方でサッカー界では一部例外を除き原則的に18歳未満の国際移籍は禁止されている。かつて10代半ばにして右も左もわからぬ外国で路頭に迷う若者が増加した背景があり、FIFA(国際サッカー連盟)は“未成年の保護”を目的としてこの方針をとった。
そうした中で、たとえば米メジャーの場合は獲得した未成年選手に対して、通信教育を受けさせたり、場合によっては学校に通わせたりするサポート体制が構築されているという。
“前例なし”もホークスが敷く万全の体制
しかし、日本球界及びホークスには“前例”がないため、当然システムもマニュアルもない。
彼らを獲得する段階で球団も様々な調査を行った。たとえば近隣の留学生を多く受け入れている高校に話を聞きに行った。ただ、アジア圏の留学生が多くスペイン語のサポートが不十分だったことや、さらにコロナ禍も重なって断念したようだ。
また、彼らの住まいについては、筑後市の球団施設「若鷹寮」となっている。異国の地で不便かと思われたが、ホークスにはもともとウィルフィレーセル・ゲレーロというドミニカ共和国出身の通訳が在籍しており、彼も若鷹寮で一緒に生活をすることで難題の多くがクリアされることになった。また、ゲレーロは元広島カープ(育成)の投手で、四国アイランドリーグなどでもプレー経験がある。日本球界の先輩でもあり、良き兄貴分となっている。