星　あれも静かなブームですね。東海大菅生は、今年の新入生からゼット・ビームスのジャージを採用しています。選抜では浦和学院のスタッフ陣が、ゼット・ビームスのパーカーを着ていました。いずれも、すごくカジュアルな感じのデザインに仕上がっています。聞くところによると、ゼット側がリクエストを出しても、ほぼビームス主導でデザインは決まってしまうそうです。でなきゃ、あそこまで振り切った野球ウェアはつくれないと思いますよ。中には、昨今の一般ファッションのトレンドに乗っかって「ビッグシルエットTシャツ」なんていうのもありますから。最近は、みんなオーバーサイズ気味にシャツとかを着るじゃないですか。

――いい悪いは別にして、もちろん着るものだけではないんですけど、高校野球は、もっと自由でいいとは思いますよね。

星　今、フォースキフトというブランドが野球界に新規参入してきていて、國學院久我山の応援団が来ていた紺色のパーカーとかをつくっていたんです。

――あ、覚えてます。すごくシンプルで、都会っぽいデザインでしたよね。

星　応援団のファッションも変わりつつあるんです。フォースキフトはグラブも販売しているのですが、女子野球の普及に力を入れているだけあって、ロゴマークも字体も、ちょっとかわいらしいんです。女子野球が盛んになって、女子向けにデザインされた野球用具が出てきたら「野球野球してない」用具がどんどん出てくると思いますよ。

――ただ、高校野球の用具は規制の壁がまだまだたくさんありますよね。

星　いちばんは、カラーリングです。なぜバッティンググローブやスパイクは、真っ黒か真っ白でなければいけないのか。なぜヘルメットは黒、紺、白の3色以外使ってはいけないのか。最近、日本のプロ野球でもピッチャーのグラブの本体と紐の色は違ってもいいことになりました。昔はダメだったんですけどね。でも、高校野球のピッチャーグラブは依然として、単色でなければ使用不可です。ただ、野手グラブは一定条件をクリアしていれば紐の色が違っていてもOKなんです。なので、うちの店に高校生が来て、「このグラブカッコいいなー」って紐の色が違うグラブを買おうとするときは、いちおう「このグラブでピッチャーはできないよ」って教えてあげるんです。そうすると必ず「なんでダメなんですか？」って聞かれる。「わからない」って答えるしかないんですけど。なんでですかね。僕もその答えを教えて欲しいんですよ。こんな会話をこれまで何度してきたことか。球数に対する考え方がどんどん厳しくなっているので、今、少しでも投げられる選手はすぐピッチャーも兼任させられる。なのに、同じグラブは使えない。普通の家庭は、5万もするグラブを2個も買えないですからね。

――紐の色って、そんなに大きな問題なのでしょうか……。

星　それも今まで何度も何度も聞かれてきました。それもこう言うしかないんですよ。わかりません。

＜前編から続く＞

#1から読む

「普通のヘルメットは1万円ぐらいですが…」高校野球で“フェイスガード”は本当に流行るのか？ 大阪桐蔭が誰も使っていなかった事情とは…