荻野　一方で、葦人のパートナー的な存在の大友栄作の場合は、『ダイの大冒険』（集英社）のポップみたいな相棒キャラが欲しい、という意図で生まれました。タイプは違いますが、どちらも読者が身近に感じられるキャラクターだと思います。逆にセレクションから葦人、大友とずっと仲が良い橘総一朗は、直前で「もう1人足してみよう」と滑り込みで作られ、少しずつキャラが定まっていきました。

葦人の相棒的存在として活躍するMF大友栄作　©小林有吾／小学館

構想段階で葦人は“モジャモジャ頭”ではなかった？

――主人公の葦人はどのように生まれたのですか？

荻野　小林先生は、キャラクターを作る、人間を生み出すことにすごくこだわりがある方なんです。同時に私も「こういう作品を描いてもらいたい！」というビジョンがあったので、名前、特技、性格……何を決めるにしてもぶつかりましたね。連載開始前から開始後しばらくは、打ち合わせが大変でした（笑）。

　いざ主人公のデザインをどうしよう？　という時に、小林先生が3～4人ほどパターンを描いてきてくれたんです。その中に現在の葦人がいて、シュッとしたビジュアルよりもふわっとした髪型の方が、ひょうきんな性格的に合っていると思い、2人で相談して今の葦人に決まりました。東京エスペリオンユースのチームメイトの本木遊馬がいるじゃないですか？　ごく初期段階では彼のビジュアルが主人公の“本命”だったんですよ（笑）。

葦人らと同学年の本木遊馬。飄々とした性格の才能あふれるFWとして描かれている　©小林有吾／小学館

――それは驚きですね……。読み手が慣れたからかもしれませんが、葦人のデザインはドンピシャという気がします。

今野　僕としては、葦人の境遇は小林先生自身を投影したキャラクターだと思っています。小林先生は『アオアシ』以前に2作品ほど連載しているのですが、それぞれ素晴らしい作品でありながらも、ご家族を養っていけるほどの大ヒット作にはなっていませんでした。「本物のプロの漫画家になれていない。今度こそは……」という思いがあったそうで、その熱い思いを「プロになって母に楽をさせたい」という葦人の気持ちに重ねているのだと思います。

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