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「ここでゴールを…」「まだ葦人の実力的に無理です」大ヒット漫画『アオアシ』担当編集が明かす作者との“アツいデュエル”の瞬間 

text by

澤田将太

澤田将太Shota Sawada

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photograph byYugo Kobayashi/Shogakukan

posted2022/04/09 17:01

「ここでゴールを…」「まだ葦人の実力的に無理です」大ヒット漫画『アオアシ』担当編集が明かす作者との“アツいデュエル”の瞬間<Number Web> photograph by Yugo Kobayashi/Shogakukan

リアルかつエモーショナルなサッカー描写に加えて、主人公の青井葦人とヒロインの一条花のラブストーリーも『アオアシ』の大きな魅力のひとつだ

――葦人の家族との関係は一巻まるまる使って描かれましたし、阿久津の生い立ちも凄まじいものでした……。スポーツ漫画としては異例なほど、登場人物のバックグラウンドを大切にされていますよね。

今野 それは本当に小林先生ならではの部分です。システマチックに計算された作品であると同時に、キャラクターの感情や人間味が非常に濃く表現されている。『アオアシ』がサッカー好き以外からも支持されている理由だと思います。

「ここでゴールを…」「まだ実力的に無理です」

――リアリティを担保する緻密な描写の一方で、いわゆる「漫画的」なダイナミックな表現も目立ちます。そのバランスはどのように取っているのでしょうか?

荻野 小林先生はすごくサッカーを勉強されていて、試合中や練習中のリアルな描写はとても魅力的です。でも一方で編集者としては、漫画的な派手なシーンが欲しいときもある。とあるシーンで、こちらが「このあたりで葦人がゴールを決めると盛り上がると思うんですけど」と提案しても、小林先生は「いや、まだ葦人の実力的に無理です」と拒否するわけです(笑)。この“ゴールを決める・決めない問題”は、何日もかけて話し合いました。ずっと粘っていると、小林先生が「アシストなら……」と譲歩してくれたり(笑)。

 プレーで漫画的な表現を入れつつも、ユースのシステムや費用がどれくらいかかるかなど、そういった現実的な部分についてはきっちり取材をして、ファクトをベースにした情報を出してバランスを取っています。

――『アオアシ』について、おふたりが「これは傑作だ」と確信したのはどのタイミングでしたか?

荻野 第1話の文章のみで書かれたシナリオを読んだ時でした。確か6~7回くらい直して持ってきてくださって……。葦人が福田監督を相手に、ピッチにいた選手の位置を10円玉と1円玉を並べて説明したシーン。葦人の異常な記憶力と視野の広さが垣間見えた瞬間です。キャラクターとしての魅力は十分にあったのですが、あの10円玉でサッカー漫画としての見せ方が定まり、一気に深みが出た感じがしました。それと同時に「この作品は絶対にヒットするはずだ」という手応えを得ましたね。そしていざペンが入ると、ますます面白かった。

【次ページ】 担当編集の心が震えたシーンとは?

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