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大谷翔平20歳が開幕投手に指名された“2月20日”…栗山監督が「絶対にその日しかない」と語った切実な理由《二刀流はいかに開花したのか?》
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph byNanae Suzuki
posted2022/04/08 06:01
振り返れば2015年、日本ハム・栗山英樹監督が大谷に開幕投手を告げた日は「2月20日」だった――。その理由とは?
「だから特打なんてやらせたくないんだよ(笑)。だって、ショーになっちゃうからね。翔平、気持ちよくてしょうがないんだろ。そんなの、ダメダメ。あんなのやっちゃったら『やっぱりオレって凄いのかな』って思うでしょ。そんなこと、別に思う必要ない。もっと必死にやれってことだよ」
「僕にはホームランが必要ですね」
今シーズンもピッチャーに支障をきたさないことを前提に、DHとして週3試合程度の出場が見込まれているが、それではあまりにもったいない。大谷は目指す数字について、こんなふうに話していた。
「バッターは、試合を決める仕事。そのために打率はもっと上げなきゃいけないとは思いますけど、僕にはホームランが必要ですね。そこが増えれば必然的に打点も増えるし、チームの勝利に近づきますから……ホームランは、20本打ちたいです」
プロに入ってからブレのない動きを作りにかかっているピッチングと違い、バッティングの動きは野放し状態と言っていい。にもかかわらず、打球の飛び出しが高く、弧が大きい。打ち上げたと思う打球がどこまでも高く、遠くへ飛んでいく。ヘッドスピードが速いからだ。しかもスイングがインサイドアウトの軌道を描いているため、ボールの内側を叩くことができる。だから、センターから左への打球が多い。大谷が子どもの頃にプレーしていた岩手県の水沢リトルリーグで事務局長を務めていた浅利昭治さんがこんな話をしていたことがある。
異次元だった少年時代のホームランダービー
「6年生のとき、県大会のホームランダービーに翔平が出たんです。各チームで4番を打つ中学1年の中で、翔平はダントツでした。みんな力むから、ラインドライブの打球になって、なかなかホームランが出ないんです。最高で15スイング中、3本の子がいたかな。でも翔平は11本、打ちました。フワッと振って、バットにボールを乗せる。軽々と運んでいるのに、打球は速いし、いい角度で上がるんです」
少年時代に岩手で打っていた弾道と、20歳になって名護で打っていた弾道が重なる。大谷のバッティングの原形は、少年時代にはできあがっていたのかもしれない。
プロ3年目、大谷は開幕投手を務め、開幕2カード目では5番を打つ。もはや二刀流は定着したと言っていい。やはり彼は、長嶋茂雄のように、野球の神様に何かを授かって生まれたのだろうか──。(前編よりつづく)