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大谷翔平20歳が開幕投手に指名された“2月20日”…栗山監督が「絶対にその日しかない」と語った切実な理由《二刀流はいかに開花したのか?》
posted2022/04/08 06:01
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph by
Nanae Suzuki
2015年も栗山英樹は手紙を認(したた)めた。
宛名は、大谷翔平。
ファイターズの指揮官は開幕投手に大役を伝える際、想いを込めて手紙を渡すことにしている。就任1年目の斎藤佑樹から始まって、武田勝、吉川光夫、そして今年の大谷──2月10日、休日の午後の、誰からも急かされることのない時間帯を選んで、栗山監督は机に向かった。何度も何度も書き直す。熱い想いを書き連ねるうち、手紙はどんどん長くなった。結局、書き上げるのに2時間半もかかったのだという。
叱咤した日に開幕投手決定、その理由
一方、受け取る側の大谷はそんなこととはつゆ知らず、栗山監督が伝えると決めた当日は朝から一つ上の上沢直之と取材を受けていた。それが終わると同時に大谷は、マネージャーから「監督が呼んでいる」と声を掛けられた。最初はまた何か怒られるのではないかと訝(いぶか)しげだったのだという。しかしそこで上沢が「開幕投手じゃないの」と声を掛けると、大谷は襟を正すでもなく無表情のまま、監督の部屋をノックした。
そして開幕投手を告げられ、手紙を受け取った大谷はこうコメントした。
「一年ずつの積み重ねでやってきて、去年を終えたとき、今年は開幕投手をやりたいなと思いました。チームに勢いをつけられるか、すごく大事なところですし、自分としても感じるものがありました」
思えば栗山監督が手紙を書いた前日は、大谷が紅白戦で暴れ馬の如きピッチングを見せた日だった。つまり、栗山監督が「ふざけんな。調整のつもりなら、100年早い」とメディアを通じて叱咤した直後、手紙を書いたことになる。開幕投手についても「白紙だな」と口にしながら、じつはこの日のピッチングを見て、指揮官は大谷の開幕投手を心に決めていたのだ。それはいったいなぜだったのか。栗山監督はこう言っていた。