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大谷翔平20歳が開幕投手に指名された“2月20日”…栗山監督が「絶対にその日しかない」と語った切実な理由《二刀流はいかに開花したのか?》
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph byNanae Suzuki
posted2022/04/08 06:01
振り返れば2015年、日本ハム・栗山英樹監督が大谷に開幕投手を告げた日は「2月20日」だった――。その理由とは?
栗山監督のこの言葉は、ピッチャーとしてもバッターとしても、プロで花を開かせるための準備期間が2014年で終わったことを意味している。バッターとしては1年目に、ピッチャーとして2年目に、土台は作った。栗山監督の言葉を借りれば、どちらも2015年は「爆発しなくちゃいけない」シーズンなのだという。ピッチャーとして何勝しようとも、バッターとしてホームランを何本打とうとも、数字だけでは追いつくことはできない“長嶋茂雄の轍”を追うための二刀流──それが高卒3年目の20歳に課せられたハードルだとしても、栗山監督によれば「ちっとも高すぎないし、早すぎることもない」のだとか。では、早々に開幕投手を託されて、とかくピッチャーの大谷に注目が集まる中、バッターとしての大谷の現在位置はどのあたりなのだろう。
思い出すのは、2月19日の名護で目の当たりにした、度胆を抜かれる光景だ。
大谷の打球音「グワアゴワガキン」
韓国のハンファ・イーグルスとの練習試合を終えた大谷が、バットを持ってグラウンドに出てきた。これがプロに入って初めての、いわゆる“居残り特打”だった。
現場の新聞記者が懸命に数えてくれた数字をそのまま拝借して申し訳ないが、この日の大谷は143回スイングして、柵越えは47本。ただし、その数字でさえ凄みを語り尽くせない、すさまじい特打だった。大げさでなく、彼の打球音はこう聞こえた。
グワアゴワガキン。
まるで、水島新司さんの野球漫画『ドカベン』の岩鬼正美である。栗山監督がこう言って、呆れていた。