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「さすがにムリ…」→「まだ間に合うかも!」寺田夏生がいま振り返る箱根駅伝“コースアウトの瞬間”「オレだったら間違えねえ」先輩の愛あるイジリも 

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小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

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photograph byAsami Enomoto

posted2022/03/31 17:01

「さすがにムリ…」→「まだ間に合うかも!」寺田夏生がいま振り返る箱根駅伝“コースアウトの瞬間”「オレだったら間違えねえ」先輩の愛あるイジリも<Number Web> photograph by Asami Enomoto

2011年の第87回箱根駅伝、10区を走った國學院大1年生の寺田夏生はコースを間違えながらも10位でゴール。同大学初のシード権獲得に貢献した

 だが、本人に浮かれた様子はまるでなかった。

「監督や当時のコーチに『実力で注目されたわけじゃないから調子に乗るなよ』ってよく言われてましたから(笑)。先輩にも『オレだったら間違えねえけどな』ってイジられて。みんな優しかったので、本当に助かりましたね」

山登りや「花の2区」を任されるも、胸に残る後悔とは?

 その後も謙虚な姿勢で練習に取り組み、2年時には箱根の5区に挑戦し、4人抜き区間5位の好走を見せた。3年、4年になるとエース区間の2区を任されるまでに成長した。

 4年時には周囲に推されてキャプテンも務めたが、大学4年間を振り返って、胸によぎるのはこんな思いだという。

「特にキャプテンを任された4年目は色々とキツかったですね。どうしたら後輩たちが付いてきてくれるか、自分の中でも何が正解なのかが分からなくなって。厳しくもできなかったし、中途半端になってしまった。もっと周りに気を配って、後輩たちに話しかけてあげれば良かったんですけどね。強く言うのが得意じゃないっていうのもあるんですけど、時には強く言うのも相手にとっては大事なので。自分に仁科さんのような厳しさがあれば、結果はまた違ったのかなと思います」

 最後の箱根駅伝は2区を走り、区間7位の走りでチーム順位を4つ引き上げた。一方でチームは総合17位と、シード権を逃した。キャプテンとして最低限の仕事は果たしたようにも思えるが、寺田は残念そうにこう話す。

「やっぱり自分が下級生の時に良い思いをさせてもらったのに、後輩たちにシード権を残すことができなかったのが悔しかったです。あのプレッシャーがかかる予選会からスタートさせてしまったのは、今でも悔いが残りますね」

 國學院大はその後、本戦と予選会を行ったり来たりしながら、着実に力をつけてきた。2019年には出雲駅伝で初優勝、2020年の箱根駅伝は総合3位と強豪校への地歩を固めつつある。

 その礎には、初めてシード権を獲得した、あの年の寺田の走りがあるのだろう。あそこで諦めるか、もう一度闘志を奮い立たせるかで、きっと人生は大きく違ったものになっていたはずだ。

【次ページ】 國學院大・前田監督の発破「早くMGC出場権を!」

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