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「銀行口座の残高が1万円しかないなら10万円あると思え」39歳で年収1000万円を捨て、120円Jリーガー→格闘家に転身したスゴい思考法 

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栗原正夫

栗原正夫Masao Kurihara

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posted2022/04/04 11:03

「銀行口座の残高が1万円しかないなら10万円あると思え」39歳で年収1000万円を捨て、120円Jリーガー→格闘家に転身したスゴい思考法<Number Web> photograph by RISE

39歳で年収約1000万円の仕事を捨て、年俸120円のJリーガーになった安彦考真(44歳)。2年前に引退した彼はなんと格闘家に転向

「当時は親子ほど年の離れた20歳前後の選手によく奢ってもらっていました。普通は断るところですが、僕のなかでは奢ってもらっているという感覚はなくて1000円のランチなら2000円分の話、3000円の夕食なら6000円分の話をしてチャラ。たまにアイスが食べたくなったら、お金もないのにコンビニの前でジャンケンで負けたやつが払おうなんて言ったりして。まあ、こんなキャラなので大目に見てもらっていました(笑)」

「銀行の残高が1万円しかないなら10万円あると思うこと」

 お金がないときこそ、どうやりくりするか。そのアイデアや思考が大切になってくると安彦はいう。

「たとえば、銀行の残高が1万円しかないなら10万円あると思うこと、10万円しかないなら100万円あると思うことが大事かなって。たとえば、残高が1万円しかないなら、喫茶店に入りコーヒー一杯を飲むかどうか悩みますよね。ただ、それを10万円あると思えれば、沖縄に行ってみようかなとなる。そうすると、誰か周りに沖縄に知り合いがいる人はいないかとなり、沖縄の宿や食事が調達できるかもしれない。そこには1万円にはなかったコミュニケーションが生まれ、それが100万円になれば、さらに話は広がり、お金が集まってくるというわけです。

 お金のことをみんな月々で考え過ぎていると思うんです。ある仕事でAは月10万円の収入があると仮定します。毎月10万円で年間120万円、安定はします。一方、Bは11カ月収入ゼロで、最後の1カ月に120万円稼ぎ年収は同じ120万円だとします。その場合Aは13カ月目もきっと10万円ですが、Bは13カ月目はまた120万円、その次は240万円になるかもしれない。僕の挑戦もそうですが、一般の人がビジネスをする上でも実際に存在する物だけを前提にしない思考を持てるかが重要な気がするんです」

 今後は格闘家としてRIZINやRISEなどのより大きな舞台に臨むことが安彦の理想である。だが、その前に3月18日にはこれまで主戦場としてきたアマチュアキックボクシングイベント「Executive Fight」のリングに立ち、また1つ勝利を重ねている。

「プロのリングに立ったあとだけに、アマチュアの試合に戻る難しさはありました。サッカーでは天皇杯でJ1のチームがアマチュアのチームと対戦し苦戦することがありますよね。僕はJ1でプレーしたことがないし、その経験はできなかったですが、似たシチュエーションだったのかもしれません。ただ、僕はあくまで挑戦者で、格闘家としてはまだまだ駆け出し。その精神だけは忘れないように自分に言い聞かせて臨みました。結果的に1ラウンドでKO勝ちすることになりましたが、勘違いしたら終わりですから」

 相内誠(K26)との試合に勝ち、アマチュアでも連勝を続けるだけに、最近は安彦との対戦を望む格闘家が出てきているとも聞く。

「プロで1度勝ったからって、ゴリゴリのファイターを当てられても困ります(苦笑)。まあ、どんな対戦相手になっても120%の力を出せば、何か新しい自分が見えるとは信じていますが……。先の北京五輪を見ても思いましたが、自己記録を更新して金メダルを取れなくても、それはそれで清々しかったじゃないですか。格闘技は数字で表れないからなんとも言えないですが、目指すは常に自己記録の更新。そうすれば見ている人にも伝わるはずで、あとは勝とうが負けようが結果はどっちでもいいじゃないですか」

 いつまでできるかはわからないが、できる限りやり続けたい。44歳の挑戦者、安彦考真の“悪あがき”はまだまだ続く。

<前編から続く>

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