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格闘技PRESSBACK NUMBER
「銀行口座の残高が1万円しかないなら10万円あると思え」39歳で年収1000万円を捨て、120円Jリーガー→格闘家に転身したスゴい思考法
posted2022/04/04 11:03
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph by
RISE
2月16日のプロデビュー戦を白星で終えた安彦考真(Executive Fight武士道)は直後の会見で、格闘家として本来大きな収入源となるべきファイトマネーを小児がん患者などをサポートしている国際医療支援団体へ寄付したい意向を示していた。
それから数週間後、練習前の安彦と恵比寿のカフェで待ち合わせると、こう話し始めた。
「(デビュー戦後の会見には約20人のメディア関係者の姿があり)サッカーをやっていた頃に、あんなに注目されたことはなかったです。ファイトマネーはこれからどういう形で入ってくるかはわからないですが、僕はそもそも私腹を肥やしたくてリングに上がったわけでないので最初から支援に回すつもりでした。ただ、最近実家から渋谷区の約20万円のマンションに引っ越しをしてしまったので、稼がないとヤバい状況なんですけどね(苦笑)」
もちろんファイトマネー以外にも、スポンサー収入やオンラインサロン、講演会での収益はある。だが、そこには限りがあり、サッカー選手時代に“実質0円Jリーガー”としても注目された安彦のお金に対する考え方は気になる。
「家賃の金額は月給の3分の1と言われますが…」
振り返れば、18年に40歳で年俸10円でJ2の水戸ホーリーホックに加入した安彦は、19年からは年俸120円でJ3のY.S.C.C.横浜で2年間プレーした。それまでの社会人時代からは大幅な減収。それでも悲壮感なく、新たな価値観や自由を楽しんでいる様子は印象的だった。
「僕のお金に対する考え方は、たとえば芸人さんなどに近いのかもしれません。一般的に家賃の金額は月給の3分の1くらいと言われていて、普通はそのメドが立ったところで引っ越しをしますよね。ただ、僕はメドが立つことを前提として、先に引っ越しをしました。つまりお金よりも時間を買って、ここから動き出そうという感じです。
神奈川県相模原市の実家から道場のある恵比寿までは、電車の乗り継ぎを含めて約1時間半。この1年は片道約1000円かけて、ほぼ毎日往復していました。移動に3時間、トレーニングに3時間をかけると、疲れて1日はあっという間に終わってしまいます。それだと時間も交通費ももったいないので、まずは時間を作って、そのあとにお金をどう作るかを考えようかなと。当然、すぐにお金は生まれないので、その間は人に助けてもらおうというのが僕の考え。もちろん、助けてもらったぶんは、お金ではない形で返すこともできると思っているし、これまでもそうやってきた部分はあります」
「39歳で年収約1000万円を捨てた」
安彦が言いたいのは、まったくお金がなくても生きていけるということではない。1つのライフスタイルとしてお金がすべてではないと言っているのだ。