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「それが分かるまでに4年もかかっちゃいました(笑)」馬淵優佳27歳が明かす“4年ぶりの現役復帰を決断した瞬間”
text by
田坂友暁Tomoaki Tasaka
photograph byYuki Suenaga
posted2022/03/28 11:01
昨年末、4年ぶりの電撃復帰を発表した馬淵優佳(27歳)。なぜ“今”、現役復帰を選んだのか
2022年に42歳を迎える寺内も、引退する前は飛込を辞めたくて仕方がなかった時期もあったという。その姿をそばで見てきた馬淵は、自分も同じ気持ちだったからこそ、辞めたいと思った寺内の気持ちが良く分かった。そして現役復帰を果たした今、寺内が復帰してから40歳を超えても楽しく競技を続けている理由も、気持ちも良く分かる。
「みんな世界と戦うために自らを追い込んで、かなり厳しい環境で選手をやっているので、どうしても辞めたいという気持ちは生まれてしまう。そのなかにも、本当はもっと楽しく競技と向き合いたいという気持ちも、選手みんなにあるんですよね」
馬淵はずっと、競技を楽しむよりも結果しか見ていなかった。結果が出せない自分はダメだと思っていたし、代表に選ばれないなら自分は無価値とすら思っていた。
「今はそんな結果よりも、飛込をやりたい、という気持に素直に向き合って、楽しんで第2の競技人生をやりたいなって思いが強いんです」
「自分がいる場所には常に“枠”があると思っていた」
こうして飛込にまつわる話をしていると、どんどん言葉が熱を帯びてくる。飛び板の変化、飛び方の変化、トレーニングの変化や難しさ。アスリートとしての気持ちの持ち方、競技への向き合い方……。嫌で離れたはずの飛込というスポーツについて話せば話すほど、馬淵の目が輝いていく。
引退後、馬淵は好きなことを見つけたかった。好きという感情をなくしてきたアスリート人生だったからこそ、何か好きだなと思えること探したいと思った。
「それで、選手たちへの取材や解説といった仕事だけではなく、本当にいろんなお仕事をさせてもらいました。どのジャンルの方もその道を極めるためにものすごい努力をしていて。そこからもすごく刺激をうけて、私はやっぱり飛込をやりたいという思いが込み上げてきました。
復帰を決断する前は、自分がいる場所には常に“枠”みたいなものがあって、その限界を感じる毎日でした。でもこの1年外に出てみて、自分が思っていた枠はこんなにも狭かったんだと気づかされた。それなら、もっと広く自分の世界を持てばいいじゃん! と思えて今があります」
それが分かるまでに4年もかかっちゃいました、といたずらっぽく笑う馬淵は、本当に楽しそうだった。
(撮影=末永裕樹)
〈#3へ続く〉