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「嫌々で飛込をやっていた自分がコンプレックスだった」馬淵優佳27歳の告白〈感情を殺した現役時代の記憶と後悔〉
posted2022/03/28 11:00
text by
田坂友暁Tomoaki Tasaka
photograph by
Yuki Suenaga
「今は今の自分の人生を楽しんでいます」
すべては、この一言に集約されていた。
馬淵優佳、27歳。幼少期から飛込を始め、中学生になった時点で、女子3m飛板飛込で日本一の座を獲得。中学3年生で出場した東アジア大会では、3m飛板飛込で銅メダルを獲得する。国内でも飛板飛込では向かうところ敵なしの演技を続け、インターハイは3m飛板飛込で3連覇を達成する。
立命館大学進学後は所属していたJSS宝塚の後輩たちに押されてしまうも、日本の第一線で活躍を続け、大学卒業後の2017年に引退を表明。これから選手として油が乗ってくるタイミングでの引退に、惜しむ声も多かった。
引退した年に、競泳で活躍する瀬戸大也と結婚。2児の母となり、世界で活躍するアスリートの夫を陰でサポートしながら子育てに奔走する毎日を送っていた。
4年ぶりの電撃復帰「復帰への不安はずーっとあった」
だが、2021年12月。石川県・金沢プールで開催された、若手が中心の飛込競技の大会、中田周三杯に選手として姿を現した。引退する前に得意としていた3m飛板飛込に出場し、若手たちに食い込む4位となった。その後あらためて現役復帰を表明。子育てをしながら、もう一度アスリートの世界で勝負することを決意した。さらに、その熱意と情熱が届き、3月31日からはミキハウスの所属選手として活動することが決まった。
「復帰への不安はずーっとあったんですね。もう一度飛込をやりたい、という気持ちはあるけど子どももいる。やりたいけど結婚してる。やりたいけどブランクもある……。ずっとそんなことばかり考えていました」
でも、それが反転した。不安よりも、やりたいという気持ちのほうが強くなった。