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「それが分かるまでに4年もかかっちゃいました(笑)」馬淵優佳27歳が明かす“4年ぶりの現役復帰を決断した瞬間”
posted2022/03/28 11:01
text by
田坂友暁Tomoaki Tasaka
photograph by
Yuki Suenaga
2021年12月、中田周三杯という大会に出場して現役復帰を果たした馬淵優佳。トレーニングは10月から開始。思うように動かない身体を少しずつアスリートに戻していく作業は、純粋に楽しかった。
「理想は“戻す”というよりも、新しく作りなおすイメージですね。トレーニングメニューも変えていますし、身体作りの方向性も変えている。だから単純に過去と比較することはできないんですけど、実はもう現役時代の種目は飛ぶことができています。スピード感もそれほど衰えもないな、という感じはあります」
「当時はそこまでする意欲がなかったんですよね」
飛込競技は、技術種目である。回転、捻り、ジャンプ。飛び板という板を使って、高く飛び上がるための助走(ハードル)も、バランスや板の踏み方など、独特な技術が必要だ。「飛び板の感覚は、私が選手をしていた時代からかなり変わりました」と、用具の変化はあったが、その基礎のすべては身体が覚えてくれていた。
ただ、その技術をこなすだけの身体能力も当然必要になる。以前は、軽い負荷を使って身体を動かすスピードを出すためのトレーニングを中心に行ってきたが、今はスピードだけではなく、パワートレーニングにも取り組んでいる。
「今までウエイトトレーニングってしたことがなくて。やっぱり、当時はそこまでする意欲がなかったんですよね」
確かに馬淵はとても線の細い選手であった。幼少期から飛んできたセンスを使って、水しぶきを上げない丁寧な入水で得点を積み重ねていく印象だった。もしかしたら当時からウエイトトレーニングをすれば、もっと高得点が狙えたかもしれない。でも、そのときの馬淵にはその前向きな“やる気”がなかった。