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栗林良吏「マイナス思考でけっこう気にしちゃうタイプ」昨季新人王の広島の守護神は“誰かのために戦う”から強くなる
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKYODO
posted2022/03/14 17:02
2年目のジンクスを打ち破るべく、順調にキャンプを過ごした栗林。ルーキーイヤーの昨年は53登板、防御率0.86と驚異的な数字を残した
マイナス思考の自分を受け入れ、開き直る――。2年目のジンクスに対しても、そう向き合っていくしかないのかもしれない。
「(2年目のジンクスと言われることも)受け入れなきゃいけないと思っています。どれだけ抑えていても、1点取られたとき、2点取られたときには(周囲から)絶対に言われると思うので」
昨季の自分の壁は高くても、越えることは諦めない。「みんなから0点台とかセーブ失敗なしは無理だよって言われるので、いい意味で期待を裏切りたい」と胸に秘めながらも、まだ見ぬ失敗を受け入れる準備をしておくという矛盾を抱える。通算セーブ数上位10投手の中でも、複数回シーズン防御率0点台を残したのは佐々木主浩氏(横浜)と藤川球児氏(阪神、0.68の06年は17セーブでリーグ最多30ホールド)の2度が最多。失敗のない投手はいない。
ファンのため、家族のため
2年目ながらすでにチーム内での信頼を勝ち取り、立場が変わった。開幕から守護神としての大きな期待を背負う。最終回のマウンドにコールされると、送り出す拍手や声援も大きくなるだろう。
「自分のためにやってきた野球が、社会人になってお金をもらってやるようになったとき、会社のため、チームのための野球と考えるようになった。今はプロに入って、お給料をもらって野球をやらせてもらっている。特に広島カープはファンあっての球団。球場に来てくださった方々やテレビで見てくださっている方々のために頑張ろうと思ってやっている。自分の結果どうこうより、ファンのためにと、練習からできている。それが結果的に、精神的な強さに変わっているのかなと思います」
トヨタ自動車入社によって野球人として思考の転換を図り、プロ1年目からの大活躍につなげた。自分のために戦うより、誰かのために戦う方が強い。というよりも、誰かのために戦うことで強くなれる、と感じさせる。
グラブの内側には座右の銘とする「謙虚」の言葉の隣に、「38」と刺繍を施す。沙耶夫人の名を数字で入れたもの。
「家族なので。自分のためじゃないというか、一緒に戦っているという思いです」
昨年12月には第1子となる長女を授かった。1月の自主トレ期間中は育児をともに行い、2月の春季キャンプ期間中は愛娘の画像や動画が癒やしとなり、力となった。
あと2週間足らずで幕を開ける2年目のシーズン、どんな逆風や重圧も受け入れ、乗り越える準備はできている。チームのため、ファンのため、家族のため、栗林はまだ、強くなれる。
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