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《破竹の11連勝、地獄の地域CLを突破》JFL昇格クリアソン新宿の守護神・岩舘直が「飛び込み営業」しながら目指した“原点”
 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byTaichi Chiba

posted2022/03/12 17:00

《破竹の11連勝、地獄の地域CLを突破》JFL昇格クリアソン新宿の守護神・岩舘直が「飛び込み営業」しながら目指した“原点”<Number Web> photograph by Taichi Chiba

「飛び込み営業のように!」というリクエストに応えて頭を下げる岩舘直。クリアソン新宿加入して3シーズン目、当初は慣れなかったサッカーと仕事の両立も板についてきた

 スポーツを通じて、社会に感動や真の豊かさを創造しつづける存在でありたい――。

 岩舘が勤める株式会社Criacaoはこうした理念のもと、クリアソン新宿の運営、新卒・中途採用の人材系サービス、アスリートによる研修やイベント事業を行うベンチャー企業だ。

 ジュビロ磐田や水戸などでプレーしたFW岡本達也が2015年に加入したのを皮切りに、DF井筒陸也(元徳島ヴォルティス/昨季限りで現役引退)、DF瀬川和樹(元栃木SCなど)、MF森村昂太(元FC東京など)ら、理念に共感した元Jリーガーが続々と紫のユニフォームをまとっている。

 2021年2月にはJリーグ百年構想クラブに認定され、Jリーグ入りという夢の実現に向けて、一つひとつ階段を昇っている最中だ。

 浦和との契約を満了した岩舘がこのチームを選んだのは、2020年のことだった。

「水戸時代のチームメイトだった岡本さんから『スポーツ選手向けの勉強会をやっているから来てみないか』と誘われたんですけど、そのときは行けなくて。そうしたら19年限りで浦和を離れることになったとき、今度は選手、社員としてお話をいただいたんです。サッカークラブがやれることって、もっとあるんじゃないか――そんなことを考えていたときだったので、ここに来れば答えが見つかもしれないと思って」

 岩舘が加入したとき、クリアソン新宿は関東リーグ1部(J1から数えてJ5に相当)に昇格したばかり。1年でのJFL昇格(J4に相当)を目指したものの、5位でシーズンを終えた。

 岩舘自身も仕事とサッカーの両立に苦しんだ。

 平日は朝から夜まで働いたうえで、週に2回(当時)、19時からの練習に参加する。週末には公式戦や練習試合でゴールを守る。

 プロ時代は練習前後に体をケアしたり、自主練習したりする時間を十分に取れたが、今はそうはいかない。練習開始の直前まで仕事が入っていてバタバタとグラウンドに駆けつけたり、練習が終わってから残った仕事を家で片づけたりすることもある。

「仕事がまったくできなかったので(苦笑)。必要以上に時間をかけてしまったり、抱え込んでキャパオーバーになってしまったり。上手くいかないことにストレスを抱えながら、夜はサッカーに気持ちを切り替えなければならない難しさを感じました。ただでさえ仕事ができないのに、サッカーにも集中できていないという葛藤があって。1年目は結果も残せず、何しに来たんだろうって……」

破竹の11連勝、あっという間にJFL昇格

 Jリーグの公式戦で通算500試合以上の出場経験を持つDF小林祐三が加わるなど、戦力を一段と充実させた2021年も、シーズン半ばまでは中位を彷徨っていた。

 ところが、夏場を過ぎてから破竹の11連勝を飾って関東サッカーリーグ1部優勝を成し遂げると、過酷な日程から「地獄」と呼ばれる全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(地域CL)、さらにはJFL・地域リーグ入れ替え戦を制してJFL昇格を果たすのだ。

「運にも恵まれましたし、シーズン終盤は過密日程だったので、勢いが持続したのも大きかった。それに、うちは試合でメンバー外の選手たちが練習や紅白戦ですごく頑張るので、高いレベルの競争が常にある。話し合いもよくするので、課題を共有して修正していけたのも大きかったと思います」

 ここにクリアソンの強みがある。

JFL昇格を決め、歓喜するクリアソン新宿のイレブン (c)Criacao

 社会、新宿区、仲間のために何ができるか。そうした考えに共鳴した選手たちが――元Jリーガーに限らず、別の会社で働く者や学生まで――集まってサッカーをしている。価値観の共有が前提としてあるため、結束力が極めて強いのだ。

【次ページ】 快進撃の裏にあった危機感とは?

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