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2270億円をチェルシーに投じた「石油王アブラモビッチ」が資産凍結されて… 再燃する“プーチン・サークルの一員”疑惑
 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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photograph byPA Images/AFLO

posted2022/03/11 17:02

2270億円をチェルシーに投じた「石油王アブラモビッチ」が資産凍結されて… 再燃する“プーチン・サークルの一員”疑惑<Number Web> photograph by PA Images/AFLO

2011-12シーズン、CLを制したチェルシーとアブラモビッチオーナー。栄光から10年、2度目のCL制覇を成し遂げたクラブは突然、大転換点を迎えた

 しかし今、ウラジーミル・プーチンに命じられたロシア軍が、ウクライナを全面的に侵攻し始めたことによって、同政府と深い関係にあるオリガルヒに制裁が下され始め、アブラモビッチもそのひとりになった。

 フットボール界でもっとも知られたオーナーのひとりも、ロシア政府の狂った行動を可能にした“プーチン・サークル”の一員ではないのかと、あらためて疑われているのだ。

「アブラモビッチは英国政府に注視され続けている」理由とは

 ロシア軍によるウクライナへの全面攻撃が始まると、英国労働党のクリス・ブライアント議員は2019年の内務省の内部資料をもとに、国会で次のように訴えた。

「不正資金や悪意ある活動を標的とした英国政府のロシア戦略の一環として、ロシア国家とのつながりや汚職行為との関連から、アブラモビッチは英国政府に注視され続けている、とこの資料に記されている。(中略)それから約3年も経っているのに、ほとんど何も手が打たれていない。間違いなくこれ以上、この国でアブラモビッチ氏にフットボールクラブを保有させるべきではない。間違いなく、彼の1億5000万ポンド(約227億円)の屋敷を含め、彼の資産の一部を押収することを検討すべきだ」

 するとアブラモビッチは当初、チェルシーの運営権をクラブの慈善団体の管財人に移管すると発表。リバプールとのリーグカップ決勝の前日のことだ(試合はPK戦の末に敗北)。ところが制裁を求める声が高まり続けると、3月2日にはチェルシーを売却すると声明を発した。ルートン・タウンとのFAカップ5回戦のキックオフまで、あと1時間ほどという時だった(試合は3-2で勝利)。

「私はクラブの利益を最優先に考えて決断してきた」

「以前から伝えてきた通り、私は常にクラブの利益を最優先に考えて決断してきた。したがって現在の状況において、クラブ、ファン、スタッフ、スポンサー、パートナーにとって、売却が最善の利益であると考え、この決断を下した」

 慌ただしいタイミングで出された声明には、そう記されている。

【次ページ】 30代半ばでチェルシーを買収した際も憶測を呼んだ

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