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2270億円をチェルシーに投じた「石油王アブラモビッチ」が資産凍結されて… 再燃する“プーチン・サークルの一員”疑惑
 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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photograph byPA Images/AFLO

posted2022/03/11 17:02

2270億円をチェルシーに投じた「石油王アブラモビッチ」が資産凍結されて… 再燃する“プーチン・サークルの一員”疑惑<Number Web> photograph by PA Images/AFLO

2011-12シーズン、CLを制したチェルシーとアブラモビッチオーナー。栄光から10年、2度目のCL制覇を成し遂げたクラブは突然、大転換点を迎えた

 クラブへの愛を公言してきたオーナーにとって、これは偽らざる言葉なのかもしれない。しかし、彼に制裁が下された今、チェルシーを売却することさえできなくなった(現欧州王者は今後、補強はおろか、選手との契約更新、チケットやグッズ販売も禁止され、最悪の場合、破産の可能性も)。真意は推測するほかない。

30代半ばでチェルシーを買収した際も憶測を呼んだ

 そもそも、恵まれない出自から天文学的な資産を手にし、30代半ばでチェルシーを買収した時も、彼の本当の動機についてはさまざまな憶測が飛んだ。2017年に英国人作家ジェームス・モンタギューが上梓した『The Billionaires Club - The Unstoppable Rise of Football's Super-Rich Owners』(日本語版は『億万長者サッカークラブ サッカー界を支配する狂気のマネーゲーム』)には、こんな記述がある。

「当初は退屈した若き資産家の暇つぶしとも見られていた。(中略)だが彼は本来、世間の注目を極力避けてきた男だ。でもチェルシーを買ったことで、世界的に知られる存在となった。彼の新たなステータスは、ロシア政府にとっても有益なものだ。またもし彼がそこからはみ出した時も、存在を消しにくくなる」

 つまりアブラモビッチにとってチェルシーは、ロシアの印象を高める広告塔であり、また自身に何かが起きた時のための「生命保険」だと目されていたわけだ。実際、彼の元パートナーをはじめ、反プーチン派のオリガルヒの多くは、投獄されたり、国外に追放されたり、謎の最期を遂げていたりする。逆に言えば、“独裁者”に完全なる忠誠を誓ったオリガルヒだけが、巨額の資産を保持し続けているのだろう。

反プーチン派の活動家が企画した“泥棒国家ツアー”

 同書のなかで、ロンドンに住む反プーチン派のロシア人活動家が企画していた“泥棒国家ツアー”(Kleptocracy Tour)が紹介されている。「ロシアとは、16年間(当時)に及ぶプーチン政権により、国家規模の極めてひどい腐敗のルールが築き上げられてしまった国だ。それは完全なる泥棒国家だ」と語る活動家が、記者たちを乗せたバスで英国首都の超高級住宅地を巡るツアーだ。

 そのなかには、アブラモビッチの邸宅もある。

 今も本人は、ロシア政府との繋がりを否定しているが、国営企業のオイル会社を当時の評価額の約30分の1ほどで譲り受けたことは、以前から知られている。

【次ページ】 モウリーニョ以来、ピッチでは痛快だったが……

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