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ウチムラの演技が海外カメラマンも驚かせた理由…キング内村航平、美しさのウラに“常人離れ”した練習量「自分の体が動く限りは…」 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byAsami Enomoto

posted2022/03/12 06:01

ウチムラの演技が海外カメラマンも驚かせた理由…キング内村航平、美しさのウラに“常人離れ”した練習量「自分の体が動く限りは…」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

最後の大会となった昨年10月の世界選手権でも離れ技のブレットシュナイダーに挑んだ

「僕の名前よりも『体操』を広めたい」

 そして、東京五輪。内村は満を持してブレットシュナイダーを披露した。完成度は抜群。'20年9月の全日本シニア選手権で初めて使ってから引退までブレットシュナイダーを通算12回行ない、すべてバーをキャッチした。とりわけ、生まれ故郷・北九州で行なわれた世界選手権でのラスト演技は、「会心の一撃。すべてを着地の一瞬で伝えられた」と表した、余韻まで表現する完璧な着地で観衆をどよめかせた。満身創痍でありながらもH難度を成功率100%の域まで仕上げ、その実力を維持しながらの引退なのだ。しかも引退会見では「これからも(できる)技の数を増やしますよ」と内村らしいどや顔を浮かべた。競技生活には区切りをつけたが、「演技者としては体操を続けられる。自分の体が動く限りは技の研究ができる」と楽しげですらある。

「何をやってもできる気がしていた」と語ったように、フィジカル面で進化を極めたのがロンドン五輪であり、キャプテンシーも含めて心まで進化したのがリオデジャネイロ五輪であり、技術面で言えば今なお進化を続けている。

 競技成績として記録に残される功績はもちろん、多くの人々の胸に刻み込まれた生き様、それらすべてに「ウチムラ」という名がつくような体操人生を送ってきたのが内村航平。「僕の名前よりも『体操』を広めたいんです」と言い続けるほどの“体操好き”にとって、引退は新たな世界を切り開くための第一歩に違いない。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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