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ウチムラの演技が海外カメラマンも驚かせた理由…キング内村航平、美しさのウラに“常人離れ”した練習量「自分の体が動く限りは…」
posted2022/03/12 06:01
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Asami Enomoto
不世出のアスリートと呼ぶにふさわしい、史上最も偉大な体操選手。内村航平が現役生活に幕を下ろした。2008年北京五輪から昨年の東京五輪まで4大会連続出場した五輪で、金メダル3個と銀メダル4個を獲得し、世界選手権を合わせて手にしたメダルは28個。現役でありながらレジェンドとして世界中の体操選手に憧れられてきた。
「3歳で体操を始めて今33歳。30年間の半分以上である16年間をナショナル選手として日の丸を背負ってやってこられたのは誇りです。今後自信を持っていろいろなことを発言していけると思っています」
引退会見で晴れやかにそう言った。
「世界一の練習をする者が真のチャンピオンになる」
'12年ロンドン五輪から2大会連続で男子個人総合を制した価値もさることながら、二度と塗り替えられないと見られているのは'09年から'16年までの世界選手権と五輪での個人総合8連覇だ。内村が頂点に君臨していた間、表彰台に複数回上がったのはフィリップ・ボイ(ドイツ)とマックス・ウィットロック(英国)だけ。内村が残した足跡は、すべて黄金の輝きを放っていた。
圧倒的な競技成績のみならず、内村がこれほどまで世界中からリスペクトされ、人々の胸に深く刻み込まれた理由は何かと問われれば、それは、最後の最後まで進化を遂げ続けたことに他ならない。
日本体育大学2年生だった19歳の時に出場した北京五輪では、代表選考会だった5月のNHK杯からの3カ月間に飛躍的に成長し、日の丸を背負ったのが初めてとは思えない演技で個人総合銀メダルに輝いた。翌'09年に初めて世界一の座についてからは「世界一の練習をする者が真のチャンピオンになる」というモットーを掲げ、その言葉通りに誰もが認める「世界一の練習」を行ない、技の難度と完成度を高めていった。