野球のぼせもんBACK NUMBER

“5年前戦力外→球団営業マン”が実現させたホークス本拠地の新名物…あなたは「マルタイ棒ラーメンポール」を知っていますか?  

text by

田尻耕太郎

田尻耕太郎Kotaro Tajiri

PROFILE

photograph byKotaro Tajiri

posted2022/03/08 11:01

“5年前戦力外→球団営業マン”が実現させたホークス本拠地の新名物…あなたは「マルタイ棒ラーメンポール」を知っていますか? <Number Web> photograph by Kotaro Tajiri

ホークス本拠地のファウルポールに命名権が導入された。取得したのは福岡市に本社を置く「株式会社マルタイ」。同プロジェクトの実現の裏に元プロ野球選手の奮闘があった

 事は、マルタイ社内で挙がった「ドームのファウルポールって、棒ラーメンに似てるよね」の声から始まった。

「マルタイ様マーケティング部の飯田健三部長から伺ったのですが、『ウチは黄色い棒ラーメンを作っている会社なので、社員は日頃からまっすぐな棒状のものや黄色いものに反応するアンテナを持ってるんですよ』と。伊藤は、飯田部長との何気ない雑談からそれを耳にしたのが最初だったそうです」

 伊藤が、マルタイの担当になったのは昨年8月だから付き合いは決して長くない。それでも「なんでも言い合える、そんな関係性を築いているように見えました」と鳥原は感じた。

セカンドキャリアで“元プロ”の肩書は出すべきなのか

 取材の場に来てくれた伊藤は、それを聞いて照れくさそうにしながら「飯田部長からは『ほんと、馴れ馴れしいヤツやな~』なんて言われながら、可愛がっていただいています」と笑う。体育会系っぽいノリが合うようだ。そうやって取引先の懐にもスッと入り込む。それは伊藤の人柄のおかげでもあるが、やはり元プロ野球選手の肩書も大きいだろう。

 しかし、1つ。筆者は仕事柄多くのプロ野球OBと接しているが、セカンドキャリアで直接的に野球と関わらない道を選んだ者の中には「元プロ」を表に出したがらない人も結構多い。

 伊藤も、そんな感情を抱いていた1人だった。

「最初のご挨拶で『元プロ野球選手なんです』と言うと、なんか自慢のように聞こえるんじゃないのかな、言わない方がいいなと思っていたんです」

「『何を一流選手っぽいこと考えてるんだよ』って(笑)」

 そんな考えを変えてくれたのが、伊藤と同じように元ホークス投手で現在は球団の営業部に所属している高橋徹(04年ドラフト3位)だった。高橋は一軍未勝利に終わった右腕だが、営業の世界では次期エース候補として球団内で評価を上げていると聞く。

「徹さんから『いいじゃん、周りの人と違うことは武器だよ』と。あと『そもそも自慢できる成績じゃないから大丈夫! 何を一流選手っぽいこと考えてるんだよ』って(笑)。僕も『たしかに』って即答しましたから」

 伊藤が担当するのは地場企業だ。だから、もともとホークスへの愛着が深いクライアントが大半である。

【次ページ】 直撃させた選手には「棒ラーメン1年分」

BACK 1 2 3 4 NEXT
#福岡ソフトバンクホークス
#福岡PayPayドーム
#伊藤大智郎

プロ野球の前後の記事

ページトップ