「最近は『こう見えても……』というのが口癖ですよ。最初は心配だったけど、お客様の殆どが元プロだった僕に興味を持ってくれて、会話も弾むんです。ただのビジネストークにならず、話がどんどん広がっていくんです」

　先述したが、伊藤は10年育成ドラフト3位でのプロ入り。この年の育成4位が千賀滉大、育成5位が牧原大成、育成6位が甲斐拓也だった。なかでも伊藤と千賀は同じ愛知県内にある高校から入団した。「高校時代は僕の方が有名だったんですよ、こう見えても」と言えば、さらに話が弾む。

直撃させた選手には「棒ラーメン1年分」

　伊藤が担当した「マルタイ棒ラーメンポール」はオープン戦からお目見えした。一般的にはそれに伴う装飾や看板などが付くが、見た目は昨季までと全く変わっていない。

「理想的なのはポール自体に装飾がある形だと思います。しかしよく確認すると、ポールそのものへの装飾は審判の視覚妨げになる可能性、ゲーム進行の妨げになるため難しいとのことでした。ポール横ネット部分の広告は球界でも前例がありますが、それだと座席のお客様がプレーを見づらい。そのため、こちらとしては心苦しい思いで『装飾なしで』とお願いに行きました。すると意外な返事を頂いたのです。

　マルタイ様の飯田部長から「装飾ができないのは非常に残念であるが、業界初ならば面白い」と言っていただけました。もちろん、何もお返しをしないわけではなく、直撃ホームランが出れば場内アナウンスで紹介しますし、それを打ったホークスの選手には『棒ラーメン1年分』を贈り、贈呈式も執り行います。実はその調整が思った以上に大変でしたが、部署を越えて多くの人にも助けてもらいました」

実況「ラーメンがのびるのは勘弁だが、打球はどんどん伸びてほしい」

　かくして、PayPayドームに誕生した“新名物”。「先日、テレビでも紹介してもらって、アナウンサーの方が実況風に『ラーメンがのびるのは勘弁だが、打球はどんどん伸びてほしい』と絶叫されてて、思わず『うまい！』とテレビの前で声が出ちゃいました」と伊藤がはにかんだ。

　ポール直撃1号を誰が放つのか注目なのはもちろんの事、スポーツビジネスにおいてもホークスが次にどんなアイデアで驚かせてくれるのかも楽しみにしたいところ。

　前例のない命名権ならば、ネクストバッターズサークルはいかがだろうか。「次へ」という企業イメージをもつクライアントがいても不思議ではない。

遊び心のジョークだが、伊藤の眉がピクリと動いた。

「その案、良いですね。頂いていいですか（笑）」

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