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あの平野歩夢2本目採点、取材記者がいま明かす「スイス関係者、中国観客もブーイング」 海外記者の質問に、平野が最後に語った「ショーンから学んだこと」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO
posted2022/02/28 18:20
スノーボード男子ハーフパイプ。金メダルの平野歩夢(23歳)をショーン・ホワイト(35歳)が祝う
決勝進出の12位以内に入るためには残り1本のランで高得点を出さなければならない。後がなくなった2本目。ホワイトは「ダブルマックツイスト1260」を見事に成功させ、全体の4位で決勝進出を決めた。そして、「本当に安堵しているよ。“ビッグファイナル”に向けて準備することができる」と笑顔を見せた。
平昌五輪では決勝のラスト3本目のランでそれまで自身が試合で使ったことのなかった「ダブルコーク1440」のコンボを初投入して成功させ、先に滑り終えていた平野を大逆転して金メダルをさらっていった。それから4年がたち、35歳になっても千両役者ぶりは健在だった。決勝進出は譲れないといった気迫があった。
ホワイトは決勝でも最後まで存在感を見せた。2本目を終えて4位。この男なら何かを起こすかもしれないというムードを漂わせながら滑り出した最後のランは、冒頭に「ダブルコーク1440」のコンボを入れたが2ヒット目で失敗。最後はヘルメットを脱ぎ、感無量の表情でパイプの真ん中を滑り降りた。
平野が「怒り」を最高のパフォーマンスへと昇華させて金メダルを獲ったのはそれから約7分後だった。多くの選手たちからハグで祝福を受けた平野だったが、その中にはホワイトもいた。ホワイトとの抱擁はスーパースターから新たに生まれたヒーローへのバトンタッチだった。
海外記者が聞きたがった“ホワイトの質問”
メダリスト会見では、優勝した平野へ世界各国の記者から質問が飛んだ。中でもホワイトに関する質問は多かった。平野はその都度、リスペクトに満ちた言葉を彼らしいゆっくりとした口調で、噛みしめるようにしながら語った。
「ショーンも相変わらず、チャレンジし続けていた。(決勝に)出ている中でも最年長(35歳)。僕にはできないそういう姿をいつも見せてくれている。すごく刺激的になりました。本当に(ライバル)みんながそろっていた決勝だった」
予選で崖っぷちに追い込まれたところから本領を発揮して決勝に駒を進め、舞台を整えてくれたことがうれしかったのだろう。
「みんなにプッシュされながら、1番上の位置に立てました」
平野は感謝を込めてそう言った。決勝にホワイトがいることの価値を自分の言葉で世界へ伝えた。
ホワイトが平野のもとへ行き、抱擁を交わした場面についても質問された。
「ショーンはいつも自分の中のチャレンジを僕に見せてくれる存在。それは今回も同じだった。彼の中では大きなチャレンジをこの場でしていたのではないかなと思う。改めて感動しましたし、やっぱり彼のやっていることにはすごく背中を押される。僕にできないことを先にやっている。リスペクトを送りたいです」
最後に語った「ショーンから学んだこと」
2人の関係を際立たせたい世界中のメディアは「ホワイトからどのような影響を受けてきたのか」など、質問を変えてどんどん掘り下げていく。