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「はい、泣いて!」基礎から演技表現までみっちり指導…“メディア嫌いで有名”エテリが語っていた教え子への想い「幸せを感じてほしいのです」 

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栗田智

栗田智Satoshi Kurita

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photograph byGetty Images

posted2022/02/19 11:06

「はい、泣いて!」基礎から演技表現までみっちり指導…“メディア嫌いで有名”エテリが語っていた教え子への想い「幸せを感じてほしいのです」<Number Web> photograph by Getty Images

北京五輪で注目を集めた女子フィギュア、ロシアのエテリ・トゥトベリーゼコーチ

 トゥトベリーゼは生徒に指導はするが強制はしない。ザギトワが先に述べた通り、その門を叩くのも、練習でどこまで力を出し切るのかも、やめるのも生徒の意志だ。ベルトコンベアに乗り続けるか降りるかを決めるのは、最後は生徒本人なのだ。

「私はすべての選手を平等に扱います」

 近年のフルスタリヌィが抱える問題に、選手の“過剰生産”がある。たとえば、昨年12月のジュニアGPファイナル出場者6人のうち実に4人がトゥトベリーゼ門下、1位から3位まで表彰台を独占してしまった。

 コーチの取り合いなど、選手同士の関係が悪化することはないかとの懸念に、トゥトベリーゼはこう答える。

「私はすべての選手を平等に扱います。誰が上で誰が下かのように対決を仕向けるのは好きではありません。生徒たちにはライバルに敬意を払うよう教えています。もし誰かがあなたのレベルまで成長したなら、それはライバルがあなたと同じくらい練習したということなのです」

 リンクではグループ練習をさせている。お互いに刺激を与え合うメリットがあるからだ。下の世代にとっては目標となる選手が身近にいることが励みになる。「強いジェーニャはみんなのお手本です。同じリンクで練習できていることが自信になるし、もっとがんばろうという気持ちになります」とジュニアの後輩たちは口を揃える。

 ほんの数カ月前までは、ザギトワも同じようにメドベデワに憧れる一人だった。それが今や瞬く間に急成長を遂げ、気づけば2人はほぼ肩を並べるまでになった。

 そして、初対決となった1月の欧州選手権。ザギトワはほぼノーミスの演技で見事優勝。今シーズン無敗のまま五輪に挑む。右足の怪我からの復帰戦となったメドベデワは僅差で2位となったものの、本番までにしっかり調子を上げてくるはずだ。

 平昌では小さなミスひとつが勝敗を分ける、まさに紙一重のメダル争いが2人を待っている。女王メドベデワが意地を見せるか、新星ザギトワの勢いが勝るか。フルスタリヌィが生んだ最高傑作による同門対決を、コーチのトゥトベリーゼはどんな気持ちで見守るだろうか。

(EU JAPAN SPORTS=取材協力)

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