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「はい、泣いて!」基礎から演技表現までみっちり指導…“メディア嫌いで有名”エテリが語っていた教え子への想い「幸せを感じてほしいのです」

posted2022/02/19 11:06

 
「はい、泣いて!」基礎から演技表現までみっちり指導…“メディア嫌いで有名”エテリが語っていた教え子への想い「幸せを感じてほしいのです」<Number Web> photograph by Getty Images

北京五輪で注目を集めた女子フィギュア、ロシアのエテリ・トゥトベリーゼコーチ

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栗田智

栗田智Satoshi Kurita

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Getty Images

もうすぐ閉幕を迎える北京五輪。今大会で最も注目を集めたのが、フィギュアスケートのカミラ・ワリエワ選手(ROC)によるドーピング疑惑である。15歳という年齢から周囲の大人たちへも世間から厳しい目が向けられているが、彼女らが拠点とする“サンボ70 フルスタリヌ”とはどのような施設なのか? 現地ジャーナリストが取材した「Sports Graphic Number」掲載記事を特別に公開する<全2回の2回目/#1から続く>。

〈初出:2018年2月1日発売号「[ロシア虎の穴潜入レポート]メドベデワ&ザギトワ『天才少女の作り方』」/肩書などはすべて当時〉

 じつはザギトワは一度トゥトベリーゼにグループを追い出されたことがある。

「来たばかりのとき、私は先生の教えをよく理解していませんでした。言われたことだけをやって、それ以上のことをする強い気持ちが足りなかったんです。練習でどこまで力を出し切るか、最後のところは自分なんです。先生にそれができないなら出ていきなさいと言われました」

 運悪く手や足の骨折にも見舞われ、故郷に帰るほかないと思ったザギトワは、後日、花束を持ってコーチのもとへお別れの挨拶に行く。しかし、そこでもう一度じっくり話し合う時間を持ち、やはりスケートを続けたいということになった。この一件を経て、ザギトワのなかで練習に対する向き合い方が変わっていった。

エリートを完璧に育成する“トロイカ体制”

 トゥトベリーゼは以前、フルスタリヌィを“工場”と呼び表したことがある。生徒は原料で、選手は製品なのだと。リプニツカヤ、メドベデワ、ザギトワ、他の選手たちもすべて、トゥトベリーゼが丹精込めて作り上げた大切な製品だ。全国から集まる子どもたちがベルトコンベアの上で日々鍛錬を受け、磨き上げられ、光り輝く選手が一人また一人と生み出されていく。

 指導がすべてトゥトベリーゼありきかというとそうではない。技術面を支える陰の功労者が、もうひとりのコーチ、セルゲイ・ドゥダコフだ。トゥトベリーゼとは'11年から組み、ジャンプやスケーティングの技術指導にあたる。他のクラブから生徒が移ってくる場合、さまざまな癖がついていることがままあるが、その矯正にも長け、親身な教え方に定評がある。

 振付師ダニイル・グレイヘンガウスも欠かせない存在だ。「ジャッジがどう見るか、結果がすべて」というトゥトベリーゼの考えのもと、現行ルールで考えうる最も“点の取れる”プログラム構成を組み立てる。ザギトワの今季のショートプログラム「ブラックスワン」はその典型だ。基礎点が1.1倍になる後半にジャンプ要素を集めるだけでなく、複雑なステップやつなぎをちりばめ、曲調に完全にシンクロした密度の濃いプログラムを練り上げていく。

 工場で言えば、トゥトベリーゼが品質管理、ドゥダコフが技術開発、グレイヘンガウスがデザイン。三者それぞれが専門に特化したトロイカ体制が功を奏している。

【次ページ】 エテリコーチが考える“選手の最終的な目標”とは

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