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《J3降格、契約満了、40歳》引退覚悟も…元日本代表10番・山瀬功治がJ2山口に入団できた理由「絶対に外しちゃいけない」と語ったものとは
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byRENOFA YAMAGUCHI FC
posted2022/02/19 11:03
Jリーグで22年連続得点を記録している山瀬。愛媛FCとの契約が満了となり一時期は引退を覚悟するも、山口に入団したことで23年目を狙う
遠藤保仁に次ぐ記録、Jリーグ22年連続ゴール
「チームに経験を伝えてほしい。力を貸してほしい」
自分を必要としてくれるレノファのために、監督のために──。クールとホットを併せ持つ山瀬の感情が動かないわけがなかった。
“幸運”は“実力”なくして呼び込めない。
2021年シーズンの山瀬を語るにおいて外せないのが、遠藤保仁に次ぐ記録となっているJリーグ22年連続ゴールだ。
10月16日、アウェーでのFC琉球戦。スコアレスの状況で終盤に投入された山瀬がギアを入れたのは自陣からカウンターで逆襲に出る後半42分だった。ドリブルで持ち出してフォワードの藤本佳希に預けるとそのまま全力でゴール前に入ってパスを呼び込み、左足でゴール右隅に優しく流し込んだ。決勝点となり、勝利の立役者はこれ以降、先発機会をグッと増やしていくことにもなる。
ボールを受けてから持ち上がってパスを出し、今度は駆け上がってリターンを受けてシュートを打ち込む。周りを見ながら、絡み合いながら。そしてどのプレーも丁寧に、正確に。流れるような一連の動きを山瀬が振り返る。
「100%の力を使うべきところの見極め」
「ああいう形のカウンターになったら間違いなくチャンスになる。途中出場だからあのプレーができたんじゃなくて、最初から出ていてもあそこまでのスピードだったかどうかは別としてゴール前に入っていったと思います。
試合のなかでは“絶対に外しちゃいけないタイミング”というものがあるんです。やっぱり年齢を重ねてきてフィジカルの衰えが出てくると、全部に対して全部の行動をするわけにもいかなくなってくる。無駄玉は打てないと言いますか。100%の力を使うべきところの見極め。攻撃のチャンスもそうですけど、守備でボールを奪うところもそう。そこは逃さないようにはなってきました」
加齢によるフィジカルの衰えに抗うつもりはない。すべて出力100%で大丈夫だった若手のころとは違う。全部のシチュエーションでできるわけでもない。“絶対に外しちゃいけないタイミング”のツボを押さえていくことで、彼は求められる役割をこなしてきた。
なぜ、それを可能とするのか。