サムライブルーの原材料BACK NUMBER
《J3降格、契約満了、40歳》引退覚悟も…元日本代表10番・山瀬功治がJ2山口に入団できた理由「絶対に外しちゃいけない」と語ったものとは
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byRENOFA YAMAGUCHI FC
posted2022/02/19 11:03
Jリーグで22年連続得点を記録している山瀬。愛媛FCとの契約が満了となり一時期は引退を覚悟するも、山口に入団したことで23年目を狙う
「普段のトレーニングもそうです。どれだけしんどくてもこれだけはやらなきゃいけないことってあるじゃないですか。結果的にゴールを奪えなかったり、ボールを奪えなかったりもある。それでも日々取り組んでいるから、やり切っているから、(ポイントを)外さないようになっているとは思うんです」
経験値という言葉だけでは説明しきれない。“絶対に外しちゃいけないタイミング”に日ごろから敏感になってイメージだけで済ますことなくきちんと実行しておかなければ、発揮できるものではない。やらなければならないときに、やり抜く力。動きに一切の無駄を省く力。嘘のない毎日があるからこそ、手にすることができた。
勝負どころのツボをグッと押さえようとすると、どうしても力んでしまいがちだ。そうなるとミスが発生しやすくなる。だが今の山瀬を見ているとプレーに熱はこもっていても、余計な力が入っていないことに気づかされる。若手にとっては何よりの良い見本だ。
「衰えを見せないことはできる」
「動き方、体の使い方で力が入りすぎると、無駄な体力を使ってしまうことになります。理想は自然体。最小のエネルギーで動かしていけば、余すことなく(効率よく)使い切れるので。力みが取れればどんなボールが来てもコントロールできて、技術の部分でもいい感覚になるし、集中もできますから」
体力の変化に対する認識、工夫、経験値、日常の姿勢。すべてがそろってその境地に至った。山瀬曰く「衰えを見せないことはできる」。やり方次第で相手より半歩早く動き出せばいいだけ。三十半ばからは自分なりに追求してきたつもりだ。あのJリーグ22年連続ゴールからは、山瀬の奥深さの一端が垣間見えた気がした。
シーズン前半はベンチ外も多く、1年通して活躍してきたとは言えない。それでもボランチ、シャドーと複数のポジションをこなし、求められている役割を察しながらチームの歯車を回してきた。チームのツボ、プレーのツボ、いろんなツボを押さえられるその特性を、レノファは、名塚監督は必要としているに違いない。