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「頭の中はパニックでした。謝ればいいのかな、とか」中野友加里36歳が今だから語る“バンクーバー五輪代表から落選した日”
text by
秋山千佳Chika Akiyama
photograph byYuki Suenaga
posted2022/02/17 17:02
わずか「0.17」差に敗れた2009年の全日本選手権から11年。元フィギュアスケーターの中野友加里さんが当時を振り返った
――まさにこの時がそうだったということですね。
中野 引退して時間が経った今だからわかりますが、当時は気づけなかった。誰もあなたのことなんて期待していないかもしれないよ、と（笑）。そう思えればよかったです。
フリー前日の夜に見た“悪夢”「今も見るんですよ」
――ショートプログラムの終了時点では、首位と僅差の2位でした。ただその夜に、悪夢を見たとか。
中野 はい。それだけ精神的に追い込まれていたんですね。
――普段からよく悪夢を見るんですか。
中野 見ます。大会のたびにスケートの夢を見ていましたし、実は、今も見るんですよ。人の演技を見るだけでも、夜、夢に出てきます。もう1回、今の自分が全日本選手権に出ることになって、もう滑れないよ！ というような（笑）。
――実際の全日本の夜に見た悪夢は、5位になるという夢でしたよね。
中野 朝4時頃に飛び起きたので、よく覚えています。えっ、今は何日だっけ、大会はもう終わったんだっけ、みたいに現実との区別がつかなくなっちゃって。眠りが浅かったんでしょうね。悪夢を見たことで、フリーでは絶対にミスをしちゃいけない、一つでもミスをしたら命取りになると思いました。
――ミスをしてはいけないと思うほど、誘発してしまいそうな気もします。
中野 焦りが本番でも出ますよね。
――フリーの時は、さすがの佐藤先生のマジックも効きませんでしたか。
中野 いや、効きました。むしろ先生のマジックがなければ、もっと大変なことになっていたかもしれません。
最終グループの1番滑走だったんですが、事前の6分間練習は空回りして、ジャンプのタイミングが全然合わずに焦っていました。そうしたら4分半くらいのところで、先生が「もういいから止まりなさい」と。「呼吸を落ち着けよう。今落ち着かなかったら、絶対うまくいかないから」と言われ、手首を掴まれました。そこで多少なりとも落ち着いたので、転倒するような最悪の事態を起こさずに済んだんです。
わずか「0.17」で行けなかったオリンピック
――先生の教えによって最悪の事態は防いで、結果的には、五輪代表となった2位の鈴木明子さんと0.17点差の3位になった、と。
