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大谷翔平、菊池雄星から“東大合格者”まで…花巻東・佐々木洋監督が明かす「夢を目標に変える」指導論〈センバツ出場決定〉
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byJIJI PRESS
posted2022/02/03 17:01
今春のセンバツ出場を決めている花巻東高。菊池雄星や大谷翔平を輩出した名門校である。同校の佐々木監督がその指導論を明かした
同校の野球部だった大巻将人は昨年3月に3度目の挑戦を経て、東京大学に合格している。中学時代から成績優秀で東大を目指せると言われてきたが、花巻東の野球部に憧れ、入部。
大好きなチームで野球ができることは幸せだったが、勉強との両立は困難を極めた。
「東大合格」を目標にしていても弱気になることもあった。そんな姿を見た佐々木は、大巻が勉強にも集中できるような環境を寮に作り、可能な限りサポートした。
同校の校舎には菊池のマリナーズ入団、大谷の新人王、MVP獲得の垂れ幕の横に、大巻の東大合格を祝う垂れ幕もかけられている。同校初の東大合格者が野球部出身というのはとても興味深い。フィールドは違えど、大巻も偉大な先輩同様に自らの目標を達成し、また新たな目標に向かって精進している。
社会人からメジャーに挑戦したOBもいる。
大谷の同級生の小原大樹は2年前、プロ野球を目指すために社会人チームを辞めることを決意した。佐々木にそれを伝えると、「どうせならメジャーに挑戦したらいいんじゃないか」と提案された。そこからの行動は早く、2020年の年明けに小原は海を渡った。
コロナ禍という難しい時期だったことも少なからず影響したのだろうか。残念ながらメジャーの夢は叶わなかったが、その挑戦はまちがいなく小原の財産になったはずだ。
目標の大小に関わらず、佐々木は一人一人の生徒に向き合い、時に背中を押し、時に温かく見守り、時に心配したりを繰り返しながら、寄り添っている。
「生徒には2つの『目』を大事にしてほしい」
『監督』は英語でマネジャーと表現される。日々の試合を管理し、試合で決定力を持つ人、という意味を持つ。一方、日本の高校野球の『監督』は、MLBで言うマネジャーであり、コーチ(指導者)であり、そして教育者という役割も担う。
3足のわらじのうち、佐々木が最も重きを置くのが「教育者」の部分である。
野球選手としてだけではなく、人としてどう生きていくか、常に選手たちに説いている。
「生徒には2つの『目』を大事にしてほしいと思っています。一つは『目的』、もう一つは『目標』。どうしてそれ(その行動)をするのか常に意識してほしい。野球の練習でも普段の生活でも、一つ一つのことを意識しながら取り組んでほしいと思います」