野茂英雄が海を渡りメジャーで旋風を起こした時、佐々木は大学生だった。野茂の活躍でメジャーリーグを身近に感じ始めた人は佐々木だけではないだろう。野茂、佐々木主浩は新人王を、イチローは新人王とMVPのダブル受賞を果たすなどメジャーで大きな功績を残した。その後も多くの日本人選手が米国で活躍し、若い選手たちの道筋を作っている。

　高校野球からプロ野球、そして今はメジャーリーグに舞台を移した菊池と大谷は、オールスターで花巻東のユニフォームに「花巻から世界へ」という言葉を書き、佐々木に贈った。メジャーでプレーするという目標をクリアし、彼らはもう一つ上のレベルの目標に達した。そして個人でのさらなる活躍、またワールドシリーズ制覇、つまり「世界一」という目標に向かって動き出している。その姿を見て、大きな舞台を目指して、また次の世代が努力をする。「目標の連鎖」がそこには存在する。

　以前は将来の夢はプロ野球選手、と言っていた野球少年たちも、夢はメジャーリーガーと言うようになった。

「岩手の子供たちの作文が菊池や大谷の影響で変わったんですよ」

　佐々木はうれしそうに話す。

3月にはセンバツ出場「岩手中心の選手で日本一」

　同校就任後から、「岩手から日本一」という目標を掲げている。

「岩手中心の選手で日本一になれるように、菊池や大谷に負けないように頑張りたいと思います」

グラウンドには「岩手から日本一」の文字が掲げられている（筆者撮影）

　それを成し遂げた時に、岩手の子供たちにどんな影響をもたらすことができるのだろう。

「春のセンバツへの出場が決まり、全国に挑む権利をいただけました。『岩手から日本一』の目標を持って入学してくれた過去の選手たち、その目標を応援してくれる方々の想いも心に刻んで、全力で戦いたいと思っています」

　これまで何度も挑戦してきた。悩むことも迷うこともある。しかし目標がブレたことは一度もない。

　3月の春のセンバツ。目標をつないでいくために、花巻東がどんな戦いをするのか注目していきたい。