エースを中心とした投手陣の力投。野手も堅守で盛り立て、攻撃ではバント、走塁と愚直なまでの小技で相手に食い下がる。苦しい時にこそ、あえて「こんなんじゃ神宮無理だぞ！」と重圧をかけ、互いに鼓舞し合った。

東北大会決勝後、流した“涙の理由”

　目指していた明治神宮大会には、あと一歩届かなかった。東北大会決勝で花巻東に敗れた選手たちに、センバツ出場を当確させた安堵はなく、ただただ悲しみに暮れた。

　赤堀が涙の理由を代弁する。

「ひたすら鬼になって指導してくださった、横山コーチへの想いがみんなめちゃくちゃ強くて。決勝で負けて神宮へ行けなかった悔しさもありますけど、コーチとの歩みが終わってしまった悲しさもありました」

　それだけではない。神宮への道が断たれた理由。時間を置き冷静になれば、それが自分たちの未熟さだと思い知らされる。

「野球の神様のメッセージだったのかな」

　シーズンオフから副主将に任命された安田のこの言葉はきっと、チームの総意だ。

「神宮に出たとしても戦える力はなかったと思います。だからあの負けは、野球の神様か誰かの『もっと力をつけろよ』ってメッセージだったのかなって思っていて。東北大会で勝って、神宮に出て調子こいてセンバツに出るよりは、悔しさとか力のなさを原動力として向かっていったほうが絶対にいいんで」

　聖光学院の意志は、Bチームの監督の横山からAチームの監督である斎藤へ託された。

「お前らが必死で練習して、真剣に勝ちたいって思えば思うほど、それと比例して恐怖心は大きくなっかんね」

甲子園で「きれいな野球はやりたくない」

　ミーティングで斎藤から煽りに煽られる。だが彼らは、こう思っているに違いない。

　怖さ上等！

　負の感情が肩を叩くたびに震え、そして燃える。日本一への欲望が選手たちを支配する。

　センバツで聖光学院が全国に魅せるもの。

　熱を帯びた眼。主将が即答した。

「『今年の聖光学院はえげつないな』っていうものを。きれいな野球はやりたくないです」

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「こいつらを負けさせたらダメだ」聖光学院の名参謀を奮い立たせた“キャプテンの日誌”…「力がない世代」が甲子園切符を掴むまで

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