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昨夏の県予選は衝撃の敗戦…失意の“ラストバッター”に主将は言った「悔しいのはお前らだけじゃねぇ!」《聖光学院、甲子園へ!》 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byGenki Taguchi

posted2022/01/29 11:02

昨夏の県予選は衝撃の敗戦…失意の“ラストバッター”に主将は言った「悔しいのはお前らだけじゃねぇ!」《聖光学院、甲子園へ!》<Number Web> photograph by Genki Taguchi

今春センバツに出場する聖光学院ナイン

 1年秋の自分のような想いをさせたくない――だから、厳しく突き放した。

「悔しいのはお前らだけじゃねぇ!」

 主将の器に触れ、ふたりの目が覚めた。異口同音に「赤堀の言葉がなかったら、大会中もずっとふさぎ込んでいたくらいでした」と、山浅も佐山も自らを恥じるように頭を下げた。

 甲子園を知らない世代。

 彼らに呼び名をつけるとすれば、それが最も適しているのかもしれない。

初甲子園を目指した秋の大会で…

 13年連続で夏の福島を制してきた聖光学院は、ベンチ入りの有無を問わずその間の部員全員が甲子園に行っている。だが、20年入学の現世代は、21年の夏の敗戦によって大舞台の息吹を感じることなく、初めて甲子園を目指す秋の大会を迎えるわけである。

「甲子園は全く感じられませんでしたね」

 エースとなった佐山が苦笑する。

「だからこそ、『自分たちの代で新しい時代を切り開く』って、秋へのモチベーションを上げていけたんだと思います」

 佐山は秋季県大会初戦の磐城戦で延長10回を完投し、試合後に人目をはばからずに泣いた。「勝ててホッとしたんで」。照れくさそうに話していたが、本心だった。

「180度方向転換できたことがよかったかな」

 孤軍奮闘のピッチングでチームを救い、涙したエース。その姿に触れた赤堀は、余計に怖くなったという。続く郡山商戦でも投手陣に助けられ、横山から「このままだと近いうち必ず負ける。そこを乗り越えられなかったら、お前たちはそこまでのチームだ」と大目玉を食らった。そして、次の光南戦の朝には、コーチの堺了と岩永圭司が、<ここまで来たらやるしかねぇだろ!! この弱かす野郎!>と、辛辣ながらも愛情のこもったメッセージをスコアボードに貼り見送ってくれた。

 無理だと言われ、危機に直面した時にこそ、このチームは地力を発揮する。

「行くしかないだろ!」

 赤堀が選手たちに意思統一を図る。

「それでも、県大会はまだ腹を括れてなかったと思いますけど、佐山とか小林(剛介)とかピッチャーが頑張っている姿を見て、光南戦あたりからはだんだん、チームとして『怖がってる場合じゃないだろ』って。『潔く戦おう』『爪痕を残そう』って180度方向転換できたことがよかったかなと思います」

 選手それぞれの歩みが、少しずつグラウンドで生きざまとして反映される。

【次ページ】 東北大会決勝後、流した“涙の理由”

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