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野球クロスロードBACK NUMBER
昨夏の県予選は衝撃の敗戦…失意の“ラストバッター”に主将は言った「悔しいのはお前らだけじゃねぇ!」《聖光学院、甲子園へ!》
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2022/01/29 11:02
今春センバツに出場する聖光学院ナイン
1年生はこの時点で、育成チームかBチームに振り分けられる。だが、彼らが入学した20年4月は、新型コロナウイルスによるパンデミックで部活動を正常に機能させられなかった。そのため、1年生だけの学年別で練習をスタートすることとなるのだが、選手間ミーティングで赤堀は、最初に「日本一」を掲げている。
「だったら神宮にも出たいな」
のちの主将の野望に乗っかったのが、東京出身の安田淳平だった。
聖光学院が初めて東北大会を制し、明治神宮大会に出場した17年。この時の専門誌で初めて大会の存在を知り、「地元の人たちに自分の成長を見てもらいたい」と福島にやってきたいきさつがあった。
安田もまた、赤堀同様に横山からの洗礼にひるまなかった選手のひとりだった。
「正直、最初は『力がないとか関係ねぇだろ』って気持ちも若干ありました。でも、コーチのみなさんから求められていることを自分たちができなかったのも多々ありましたし、『力がない』ってすぐに自覚できました」
主将の脳裏にこびりつく「あの秋」
安田のこの解釈は、チームの誰もが胸に刻む共通認識となった。それでもブレぬ日本一。まだまだ未熟だった彼らの幹を支えたものこそ、赤堀の求心力だった。
「ずっとプライドを持っているので」
真っすぐな視線で訴えかける。覚悟を決めた男の眼には鋭さがある。なぜ、そこまで言い切れるのか。突き動かすものは何なのか?
赤堀に訊く。いやぁ……何かを逡巡するように口ごもる。でも、まあ……。言霊に転換するまでじっと待つ。「秋」。そう呟いてから、赤堀が想いを解放する。
「1年の秋にベンチに入れさせてもらって、自分がバント処理をエラーしてしまって。そこから連打されて負けてしまったことが……」
「先輩を泣かせてしまった」
それは、20年の秋季県大会2回戦の東日大昌平戦だった。
サードを守る赤堀にミスはあったが、聖光学院はこの試合で4つのエラーを記録している。それだけが直接の敗因となったわけではないが、赤堀はとことん自戒した。「下級生の自分が試合に出させてもらっているのに、先輩を泣かせてしまった」と。
「『先輩たちのセンバツや神宮大会の可能性を消してしまったんだ』って。そうなるといろいろと考えてしまって。先輩たちの親だったり、応援してくださっている方たちも絶対に悲しんでいる。自分はもちろんですけど、『もう誰にもそういう気持ちにさせたくない』って思いました。自分の原点です」