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野球クロスロードBACK NUMBER
昨夏の県予選は衝撃の敗戦…失意の“ラストバッター”に主将は言った「悔しいのはお前らだけじゃねぇ!」《聖光学院、甲子園へ!》
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2022/01/29 11:02
今春センバツに出場する聖光学院ナイン
無力さを再認識し、責任が芽生えた瞬間だった。この試合からオフに入り、1年生の学年別での練習が始まると主将に任命され、ミーティングでは「日本一」「神宮」への意欲をよりチームに浸透させていく。
決意を赤堀が野球ノートに記す。
<口癖になるくらい、秋の神宮、センバツを意識する。どうしても行きたい。みんなで意思を固めた>
「59期生のみんなとBチームをやり切ります」
学年別が終わった3月には、Bチームの監督でもある部長の横山から「Aチームからお呼びがかかったらどうする?」と意思を確認されたことがあった。
赤堀の答えは、「最後まで59期生のみんなとBチームをやり切ります」だった。
「3年生とはもちろんやりたかったですけど、横山コーチの想い、チームメートの想いを考えた時に、Bチームのキャプテンとしてこのチームでやり切らないといけないと思ったんで。そこに迷いはなかったです」
それは主将として、チームが掲げる日本一と神宮大会と同じくらいの矜持だった。
「横山コーチが『キャプテンの器でチームが決まる』と、ずっと信頼して話してくださったので。『自分がキャプテンじゃなきゃチームは終わる』くらいの気持ちを持って。コーチの想像を超えるくらいの器にならないとダメだなって思っています」
昨夏の敗戦は「人生で一番の衝撃でした」
聖光学院の主将としての資質。日本一、神宮大会への信念が試される分岐点があるとすれば、それはあの夏の敗戦だ。
昨夏の準々決勝。光南に敗れ、チームが打ちひしがれる光景を、赤堀たち下級生は三塁側のスタンドから呆然と眺めるしかなかった。夏の前哨戦である春の県大会で優勝し、監督の斎藤智也をして「近年では最も仕上がったチーム」と言わしめて迎えた大会だっただけに、「3年生が負けるはずがない」と誰もが現実をすぐには受け入れられなかった。
「あの負けで、自分たちの秋がもっと不安になってしまいました」
赤堀だけではない。安田も「誰よりも神宮や日本一と言ってきたつもりですけど、県大会は負けるのが怖くて」と漏らした。
とりわけチームのなかで重症だったのが、夏にベンチ入りした次期エースの佐山未來と正捕手の山浅龍之介だ。特に山浅は最後のバッターとして三振に倒れ、油断するとすぐにその残像が脳裏をよぎるほどだという。
「人生で一番の衝撃でした。秋は『また新しい気持ちで』と切り替えようとしましたし、3年生を絶対に神宮とセンバツに連れていきたい想いはすごくあったんですけど、それより怖さのほうがデカかったかもしれないです」
主将「悔しいのはお前らだけじゃねぇ!」
先輩たちの慟哭を間近で見ており、気持ちの整理をつけられない山浅と佐山の気持ちも理解したい。だが、赤堀は同情を遮断した。