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上原浩治の「あっぱれ!」な3つの日米実績… 日本野球史上最強のコントロールと称えたいワケ《張本勲の「喝!」を継承》
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph bySports Graphic Number/Getty Images
posted2022/01/16 06:00
巨人、侍ジャパン、レッドソックス。上原浩治が残した実績とコントロールはまさに「あっぱれ!」
上原の投球は、1球1球が微妙に変化する。球速は遅くともバットの芯でとらえるのは至難の業で、強打者があきらめの表情を浮かべることもしばしばだった。
レッドソックス時代は、上原から投球術を伝授された田澤純一とともに「勝利の方程式」を確立し、2013年にはワールドシリーズの胴上げ投手になっている。
日米通算ではあるが、通算成績は134勝128セーブ104ホールド。100勝100セーブ100ホールドは日本では上原浩治だけしかいない。
先発でも救援でも、日本でもアメリカでも結果を残した稀有な存在なのだ。
2)日本野球史上最も制球力が高い投手
では、上原はなぜこんな活躍ができたのだろうか。それはK/BBという数字で説明できる。
K/BBは奪三振数を与四球数で割った数字、簡単な数字だが、奪三振が多くて与四球が少ない投手は絶対的な安定感がある。K/BBはMLBでは投手にとって最も重要な指標の一つとされるのだ。
NPBで1500回以上投げた投手でのK/BBの10傑は以下のようになっている(2021シーズン終了現在)。
1上原浩治6.64(1400振/211球)112勝67敗1583.2回 率3.02
2土橋正幸4.61(1562振/339球)162勝135敗2518.1回 率2.66
3杉浦忠4.29(1756振/409球)187勝106敗2413.1回 率2.39
4前田健太3.87(1233振/319球)97勝67敗1509.2回 率2.39
5成瀬善久3.74(1211振/324球)96勝78敗1567.2回 率3.43
6稲尾和久3.58(2574振/719球)276勝137敗3599回 率1.98
7村山実3.55(2271振/639球)222勝147敗3050.1回 率2.09
8川上憲伸3.53(1381振/391球)117勝76敗1731回 率3.24
9杉内俊哉3.511(2156振/614球)142勝77敗2091.1回 率2.95
10岸孝之3.510(1878振/535球)141勝94敗2166.1回 率3.06
上原浩治は1936年から始まり今年で86年となるNPBの歴史でK/BBの数値が1位。しかも2位の土橋正幸に2ポイント以上の大差をつけてダントツなのだ。
楽天の田中将大は今オフの時点で1470.2回、来季には1500回に到達する。現時点でのK/BBは4.49(1364振/304球)だから、来季には杉浦忠を抜いて3位に躍り出るだろうが、上原の牙城を脅かすことはできない。また巨人の菅野智之も1475.2回でK/BBは4.54(1316振/2190球)だから来季、土橋正幸に迫る可能性があるが、上原には及ばない。
マウンドの上で跳躍するようなダイナミックな投法ながら、上原は圧倒的な制球力を誇っていたのだ。