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「おっきいだけって言われたくない」身長210cm牧大晃(高松工芸・3年)を変えた、高橋藍ら先輩たちの優しい言葉《春高バレー》
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNaoki Nishimura/AFLO SPORT
posted2022/01/04 11:03
昨年度大会でも大きなインパクトを残した高松工芸・牧大晃。今年はキャプテンとしてチームを牽引する
「合宿で、レシーブの位置だったり、ブロックの構え方だったり、スパイクの打ち方だったり、数え切れないほど多くのことを教えてもらったので、そういうのを早くみんなに教えたいと思って、伝えていたら、いつの間にか指示を出したり、率先して意見を言うようになっていました」
東京五輪を終え、9月のアジア選手権に向けて再集合した日本代表合宿に、牧は高校生でただ1人、練習生として参加した。「通用しませんでした」と苦笑する。
「自分が少し自信を持っていたサーブレシーブも、思ったよりできなくて。まあ、ものすごく自信があったわけではないんですけど、この身長ではできるほうかなと思っていました。でも向こうでレベルの高いサーブを受けてみると、やっぱり全然ダメだなって。心を折られました(苦笑)」
合宿ではオポジットに入ることもあったが、「やっぱりアウトサイドにこだわりはあります」と、そこは譲らない。
「自分の身長でサーブレシーブができる選手というのを目指しているので。だからそこは、負けたくなかったなって」
そう悔しさをのぞかせた。
「おっきいだけって言われたくない」というのが口癖だ。
謙虚でおっとりした雰囲気の牧だが、この点に関しては負けん気が顔を出す。
「自分は大きくてレシーブができないって思われがちなので、それを払拭できるように、サーブレシーブを磨かないと」と努力を重ねてきた。
だが日本代表のサーブは当然のことだが高校生相手とは訳が違った。身長は誰よりも高いが、代表選手の中では筋力も、すべてのプレーのスキルもまだまだ足りないと痛感した。しかし牧は「楽しかった」と笑顔で言う。
牧を放っておけなかった高橋藍
「通用はしなかったんですけど、先輩方がやりやすい環境を作ってくれました。高橋藍(日体大)さんがずっと僕と一緒にいてくれて、つきっきりで教えてくれたり、皆さんが優しい声かけをしてくれたので」
高橋も、初めて代表合宿に参加したのは高校生の時で、その緊張や不安を昨日のことのように覚えていたから、牧を放っておけなかったと言う。
「自分も最初はめちゃめちゃ緊張してやばかったですからね。下の子が入ってきたら、積極的にしゃべっていきたいと思っていました。牧君も最初すごく緊張していたので、自分がしっかりと寄り添ってあげないといけないなーと思って、積極的に話していましたね。僕は関西人なんで、ずっとしゃべってられるんで。コミュ力が高いのかもしれないです(笑)」
牧は代表の選手やスタッフから様々なアドバイスを得て、プレー面だけでなく、体のケアや食事に対する意識も大きく変わった。
「皆さんは、自分に今何が足りないかを感じて、例えば、今日は疲れているからこれを食べよう、みたいなことができている。僕も、練習後にフルーツを摂ったり、飲み物も気をつけるようになりました。前までは炭酸飲料とか、ジュースをいっぱい飲んでいたんですけど、最近は水とか、100%の果汁ジュースや牛乳しか飲まないようにしています」
代表選手が使っていた器具を購入し、家でも体のケアを念入りに行うようになった。興味がよりバレーボールへ、自分の体へと向かうようになった。