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「おっきいだけって言われたくない」身長210cm牧大晃(高松工芸・3年)を変えた、高橋藍ら先輩たちの優しい言葉《春高バレー》
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNaoki Nishimura/AFLO SPORT
posted2022/01/04 11:03
昨年度大会でも大きなインパクトを残した高松工芸・牧大晃。今年はキャプテンとしてチームを牽引する
目立つのは苦手だが、牧の夢は大きい。バレーを始めた中学生の頃から“海外”を見ていた。堂々と、夢をこう語る。
「日本代表で活躍して、海外でも通用するプレーヤーになって、海外(のチーム)から声をかけてもらって、海外に行く機会を自分の手でつかみ取りたい。それで、自分の身長を活かしたプレーや、サーブレシーブ力を高めて、海外でもトッププレーヤーを目指したい」
憧れている選手の1人が、ポーランド代表の主将で、Vリーグ・パナソニックパンサーズに所属するミハウ・クビアクだ。クビアクは身長192センチと決して長身ではないが、抜群のテクニックと、機転の利いたアイデア溢れるプレーで世界と渡り合ってきた。
「すごく頭を使ってプレーしているし、全部がすごいプレーヤーなので目標にしています。自分も頭を使ったプレーをしていきたいし、それに加えて高さも活かしていきたい」
210センチのクビアクがいたら……そこには希望しかない。
そんな大きな夢を胸に秘めつつ、牧は足元を見つめて一日一日、高校生として残された日々に全力を注いできた。
春高出場決定、涙の理由は?
練習中は、インタビュー時のささやくような声が嘘のように大きな声で号令をかけ、チームメイトにまめに話しかける。
坂出工高に勝利して春高出場を決めた時には、膝に手をつき、涙ぐんだ。
「自分と一緒にプレーしたいと言って来てくれた1年生もコートにいたので、そうしたチームメイトと一緒に全国に行けるというのが、嬉しかったです」
夏から正セッターを務めている1年生の河田一優は、中学時代、学校は違うが合同チームで一緒にプレーしていた仲で、牧を慕って高松工芸高に来た。
夏のインターハイは県予選で敗れて出場できず、全国に連れていってあげられなかったという悔いがあった。今回の春高が、彼らと一緒に全国で戦う最後のチャンス。「全国出場を贈ることができた」という安堵と喜びの涙だった。
昨年の春高は、優勝した東福岡高に準々決勝で敗れてベスト8だった。今年は、後輩たちとともに全国制覇を目指す。
と同時に、春高は将来へのステップアップの場でもある。
「やっぱり春高で活躍した選手が、日本代表でも活躍していると思うので、自分もまず全国大会で、自分の良さ、高さ、この身長だからできることを見せて、今後のバレーにも活かしていきたい。やっぱり活躍して日本代表に入りたいなと思います」
高校生活の集大成であり、夢につながっていく舞台。誰よりもスケールの大きなプレーで、悔いなく暴れてほしい。